【金カム】坊主頭に興味が湧いて弐 (ページ36)

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85話　双眼鏡ページ36

アシ「…杉元」

杉元「大丈夫だ…こんな傷じゃ、俺の魂は抜けていかない…」

負傷している杉元の側で、心配そうにアシㇼパが様子を見ている。この二人は本当に二人で一つなのだろうな、と少し羨ましく思った。

そんな中、ヴァシリがなにやら遠くを見つめていることに気づく。

白石「どうしたぁ？頭巾ちゃん」

貴『何か見つけたんですか？』

ヴァ「フンフン」

「見ろ」とでも言うように遠くの方を指差すので、渡された双眼鏡で見てみると、一人の兵士が血痕を辿りこちらへ向かっていた。

貴『兵士…！』

そう言って白石に双眼鏡を渡す。

白石「……！やばい！一人こっちにくる…！」

貴『…どうします？』

「出航は待てー！」と兵士が遠くの方で叫んでいる。

白石「ばーん！やれ！お前なら当てられるだろ？ばーん！」

アシ「脚だぞ！脚を狙え！」

ハラハラしながら皆が発砲を待った。

パァ…ン

アシ「…脚に当てたか…？」

白石「…よくやった」

貴『貸してください』

ミツキが白石から双眼鏡を見ようとすると、「ミツキちゃんは見なくて良いから！」
等と訳の分からないことを言われる。

それでも白石からぶん取って覗くと、そこには血を流しピクリともしない、さっきの兵士が倒れているのが見えた。

貴『…』

何故わざわざ頭を狙ったのだろう。
そんなことをぼんやりと疑問に思った。

…

そして暫くして、船は港からかなり離れたところまで進んだ。

貴『はぁ…ちょっと横になろ…』

思い切り走ったせいか、亜港で負った塞がりかけていた傷がズキズキと痛む。
痛み止めがあればいいのに。

白石「…まったくよりによって、あんなところで逃げようと決めるなんて…」

杉元「…アシㇼパさんなら、自分の信じるやり方でアイヌを守る道を探してくれると、俺は信じることにした」

白石「それはいいけど…どうやって俺らだけで見つけんのよ」

貴『…っ大砲！？』

その直後、船の真横が吹き飛び、巨大な海水の柱が立った。

白石「っ！？お…追っかけてきたーッ！！」

そこから杉元の機転のおかげで、流氷の先に逃げこむことが出来た。

貴『…とはいえ…』

杉元「追いつかれるのも時間の問題か…」

アシ「…よし、白石、峰山！来い！白い布を集めるぞ！」

貴『…！なるほど、冴えてますね」

白石「？どうすんだ、白旗あげんのかぁ…？」

…

その後、白い布を被り雪景色の中に溶け込みながら逃げるというアシㇼパの作戦は無事成功し、ミツキ達は流氷の上を歩いていた。