84話 フンフン ページ35
アシ「私はどこへ連れて行かれる？」
鶴見「後で教える」
貴『…はぁ……』
怪しいなぁ…
そう思いミツキが小さく溜息をつくと、それが聞こえてしまったようで鶴見と目が合ってしまい、慌てて視線を地面に向けた。
アシ「その口からはっきりと聞きたい。鶴見中尉の考える未来に、アイヌは存在しているのか？」
鶴見「勿論だ。みんなが幸福になる未来を目指す。それは我々の意志と行動にかかっている。アシㇼパにも是非協力してもらいたい」
白石「ボェ…」
それから少し話を聞いていると、段々と鶴見の額から妙な液体の流れる量が尋常じゃないものになっていった。
貴『なんだあれは…』
鶴見「！おい」
月島「…っ！アシㇼパ！何をしている！」
ビュンッと複数の矢が皆の頭上に放たれる。
貴『あれは…！』
杉元「毒矢だー！！掠っただけでも即死だぞー！！」
月島「避けろ！！」
兵隊達が慌てて避ける間に、杉元とアシㇼパは逃げていった。
鶴見達は彼らを追い、その場には白石とミツキ、谷垣だけが取り残された。
白石「…あれ、俺死ぬ？」
貴『死にませんよ、よく見たら全部空の矢だったし』
そう言って頭に刺さった矢を抜いてやり、ひとまずその場から離れる。
谷垣「連絡船…！」
白石「あぁ、故障してたのが今日出航になるんだ。絶対その船に乗る気だ！」
それから暫く三人で走って向かっていると、アシㇼパと杉元がヴァシリの馬に乗ってきていた。
アシ「白石！峰山！」
貴『ア…アシㇼパさん！』
白石「アシㇼパちゃん…！やっぱり思った通りだぜ！」
アシ「乗れ！」
「よっ！」と軽々馬の尻にしがみつく白石に続いてミツキも乗ろうとするが、どう見てもそんなスペースはない。
貴『え…え…私これ乗れないやつですか？』
ヴァ「…フン」
貴『えっ』
ミツキが焦っているとヴァシリにヒョイっと手を掴み引き上げられ、先頭に座らされた。
貴『あ…ありがとうございます…』
ヴァ「……フンフン…」
このお馬さんに五人も乗ってるよ。なんかごめんね。
そんなことを呑気に考えていると、「おい待て！」と谷垣の声がする。
アシ「谷垣まで来るな！インカラマッは鶴見中尉のところにいるんだろ！」
白石「…達者でな、谷垣源次郎」
そのやり取りの後、谷垣はこちらに背中を向け戻っていった。
そんな彼の後ろ姿を見送り、ミツキ達は船へと向かった。
…
そして、ミツキ達は連絡船に乗り込むことに成功した。
白石「もうすぐ出航するってよ」
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年3月2日 7時
