70話 不覚 ページ21
夜。
髪を伸ばし半分だけを刈り上げ、囚人に擬装した白石が監獄の中に侵入し、ソフィアの手下にニヴフの服を渡した。
そして翌朝。
半分だけを刈り上げているとはいえ、坊主じゃない白石をミツキは初めて見たので、つい見てしまう。
貴『初めて見た…伸びてるの』
そう言うと、白石がニタッとミツキ に笑いかける。
白石「ふふん！どうだ、男前だろぉ〜？」
貴『…』
ミツキはそんなふざける白石を無視して町の方を見るようにそっぽ向いた。
不覚にもちょっとだけ、かっこいいと思ってしまった。
ミツキは赤くなる耳を長い髪で隠す。
その後、長谷川という男とソフィア、ウイルクの話をキロランケから聞いた。
貴『うわ…すごい流氷…』
キロ「…もうすぐタタール海峡は氷に覆われ、樺太島は大陸と繋がる。
ソフィアを脱獄させたらこの氷を歩いて大陸へ逃げ、更に大陸にもいるソフィアの仲間達と合流する」
その後、事前に爆薬を詰める為の穴を開け、灯台から爆薬も手に入れて、ついに決行前日の夜。
キロ「正面は警備が厳しいからその反対、タタール海峡に面した塀を四箇所同時に爆破する」
白石「それがソフィア達への脱獄の号令となるわけだな」
キロ「決行は明日の夜明けと伝えてある。
…準備は整った」
…
そして、決行の日の夜明け。
爆発の音がする。しかし煙は一箇所からしか立っていない。
白石「えぇぇ〜？！」
貴『どうしたんですか…？！』
白石が慌てて塀の穴を確認しにいく。
キロ「どうした白石！なんで点火しねぇんだ！」
白石「したけど爆発しないんだよ！」
そこへ尾形達もこちらへ走ってくる。どうやら向こうも駄目だったらしい。
キロ「くそ…っ爆薬の保存状態が良くなかったか…！」
そのままミツキ達は他の塀を確認しに急いだ。
貴『…あ、あそこはちゃんと穴があいてますね！』
爆発で塀に穴が空いているのはここだけのようだ。
尾形「……妙だな…誰も出てこないぞ」
そんな中、キロランケの指示でもう一度点火し直すことになった。
白石「来いミツキちゃん！他のとこをもう一度点火しにいくぞ！」
貴『はい！』
その後、なんとか二箇所目の塀を爆破することに成功し、キロランケ達と合流した。
体格の良い女性が、アシㇼパに声をかけてきた。
アシ「…ソフィアか」
ソフ「…アシㇼパ」
貴『…！この人が…』
白石「えっ
……なんか想像とちがぁう…」
キロ「ソフィア…！」
そうか、キロランケとソフィアは今長い時を経ての再会…！
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年3月2日 7時
