68話 臭いショール ページ19
そして暫く進み亜港へ向かっていた道中にて、キロランケがミツキに何かを渡した。
貴『これは……ショールですか』
キロ「ああ、防寒用だ。ずっとそれじゃ寒いだろ」
ミツキはキロランケに礼を言い、早速ショールを羽織る。
貴『あったかぁ…』
白石「お、いいねいいねぇ〜！ミツキちゃん、ずっとその袴だけだったもんね〜」
思い違いだろうか、あの怪我以降キロランケが少し気に掛けてくるようになった気がする。
貴『…このショール…煙草臭い…』
……
それからまたミツキ達は先へ進み、亜港の岸辺にて。
ミツキ達は、尾形の仕留めたシロイルカを浜辺へ運んだ。
アシ「真っ白なフンペは初めて見た」
キロ「樺太では、モニフンペと呼んでる」
白石「くじら肉かぁ〜ハラショーだぜぇ〜！くじら肉には味噌が欠かせないんだけど…」
貴『さすがにロシア領じゃ売ってないですよねぇ…』
そう話しているとアシㇼパが曲げわっぱを手に持ち、二人に中身を見せた。
白石「あ〜れぇ〜？なんで杉元の味噌持ってんの〜？」
アシ「私が…ちょっと預かっていた…杉元は荷物が多いからぁ…」
貴『味噌…美味しかったんだね…』
…
それから調理を済ませ、火を皆で囲む。
白石「シロイルカ肉にじゃがいもと、アシㇼパちゃんの干したギョウジャニンニクとニリンソウ、杉元からぶん取った味噌で作ったクジラ汁だ」
貴『はぁ…美味しさが体に染み渡るぅ〜…』
キロ「うまい！」
白石「やっぱ日本人は味噌だぜ〜」
アシ「杉元のオソマ…ついに無くなってしまった…」
貴『オソマじゃないんだけどなぁ…』
悲しそうに呟くアシㇼパにミツキがフォローを入れる。
白石「日本に戻ったら買い足せば？」
アシ「杉元のオソマじゃなきゃいやだっっ」
貴『その言い方じゃ誤解を生みますよアシㇼパさん…』
白石「そのうちまた食えるよ、アシㇼパちゃん」
貴『…』
杉元がまだ生きていると二人は考えている。
実際、自分と白石は杉元が撃たれたところを見ていないから、そう考えるのも理解出来る。
でも、アシㇼパはその現場を見ていたんじゃ…
貴『よく…わからないなぁ…』
白石「？」
そんな一度考えだしたらキリのないことを考えていると、尾形から「ヒンナ…」と呟くのが聞こえた。
尾形「…ヒンナ」
アシ「尾形お前…！！」
貴『今ヒンナって…！？』
「もう一回言えるか！？」とアシㇼパに頼まれるも、尾形のヒンナはその二回だけしか聞けなかった。
白石「…で、キロちゃんさ」
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年3月2日 7時
