64話 御守り ページ15
それからしばらくして、白石達の出す騒音が静まり太鼓の音だけになった頃。
白石「…ちょっくらウンチしてくるけど…アシㇼパちゃん、ミツキちゃんも、もう見ないでね！」
アシ「ん？」
貴『あの野グソを見たのは実質事故ですよ』
白石が何かを合図しているのに気付いたアシㇼパとミツキは目配せをした。
アシ「峰山、うんこ見にいくぞ」
貴『やだなぁ…』
アシㇼパとミツキがテントの外へ出ると、テントから少し離れた所に白石が立っていた。
アシ「どうした、白石」
貴『何かありましたか？』
白石「俺と一緒に逃げよう。今しかねぇ」
「…！」
白石「一緒にロシアで行動するには危険すぎるだろ、あいつは！しかもあいつは、俺達に隠し事をしてた！
本当は、ウイルクと一緒に帝政ロシアと戦うために、アイヌの金塊を奪おうとしてたんだ！」
アシ「…」
貴『…アシㇼパさん……』
アシㇼパの険しい顔つきが、心をざわつかせる。
こんな小さい子の背中に大きなものが乗っかっているのかと、ふと考えてはどうしようもない気持ちになる。
白石「荷物は置いて行くんだぜ、逃げたことがバレるまで距離を稼がねぇと！」
アシ「……私は残る」
白石「なんで！」
その時ふと、背中にとすっと温もりが当たり見上げると、キロランケが後ろに立っていた。
貴『…！』
キロ「俺の昔の名前は…ユルバルス」
白石「ぃ…っ？！」
キロ「俺達が殺したロシアの皇帝は、樺太千島交換条約を結んだ張本人さ。
俺達は極東の少数民族独立のために戦っていた。
その中には、俺の息子達やアシㇼパ達、北海道のアイヌも含まれるはずだ」
アシ「…私はもっと知りたい。アチャがどういう人か、どうしてのっぺらぼうになったのか」
…
ミツキ達はひとまずテントに戻り、尾形の回復を待った。
貴『…さっきよりは熱が下がったみたいですね』
アシ「病魔を祓うというこのはちまきも効いたみたいだ」
キロランケが何か感謝らしき言葉を述べた後、ウイルタの男は何かをアシㇼパに手渡した。
アシ「…なんだ？」
貴『顔みたいなの書かれてる…』
キロ「これを尾形に。身に付けると頭痛が治るんだそうだ。治療する用途によって、色々な形があるらしい」
貴『へぇ…いっぱいある……』
そう言って見ていると、男から何かをキロランケが受け取った。
キロ「これをお前にだと。こいつを付けると怪我の治りが早まるんだと。良かったな」
そう言われ受け取ると、どうやら腕に付けるもののようだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年3月2日 7時
