50話 ピュウ☆ ページ1
そして一行はいよいよ網走監獄へと辿り着き、監獄内へと忍び込む作戦を練ることに。
白石「侵入経路は警備の手薄な網走川に面した塀しかねえ」
牛山「手薄と言っても誰も見に来ないわけじゃないだろ？」
白石の考えた作戦は、監獄内に続くトンネルを掘っていることがバレない為にアイヌの小屋を建ててトンネルを隠し、掘る際に出た土を鮭を獲る合間に川に捨てる、というもの。
白石「トンネル掘りをアイヌの鮭漁で偽装する…
網走監獄侵入大作戦だぜ！！」
杉元「シライシ…やっぱすげえや、脱帽だ」
白石「ッピュウ☆」
杉元から褒められた白石は手を銃のようにし、得意げにピュウと杉元に向けて言う。
アシ「脱獄王…やっぱりお前を網走まで連れてきて正解だった」
貴『さすが、脱獄王という異名は伊達じゃないですね…』
白石「ピュウ☆ピュウピュウ☆」
尾形「…」
「ピュピュピュウ☆」とアシㇼパやミツキ、尾形に次々と連発する白石は中々滑稽で面白く、ミツキは思わず笑いそうになるのを堪えた。
…
その晩。
アシ「私達は鮭一匹を余すことなく利用する。
頭を切り落として、上顎の真ん中の氷頭という軟骨を切り取る。これを使う珍味があるけど…」
アシㇼパが「杉元！何かわかるか？」と杉元に急に問いかけた。
話をふられた杉元は若いおなごのようにモジモジキョロキョロする。
杉元「えぇ〜？うそぉ〜まさかまさかぁ？アレなのぉ〜？」
アシ「チタタプだ！」
杉元「ハイ出ました！チタタプ！」
なんなのだろうか、この茶番は。
網走監獄がもう目前だというのに、呑気な人だ。
そう思いつつ、ミツキも「チタタプ〜！」とワクワクした様子で拍手をした。
アシ「チタタプとは本来、鮭のチタタプのことを指すんだ。エラと氷頭をチタタプする。すればするほど美味しくなる」
白石「チタタプ！チタタプ！」
白石の次にミツキもチタタプし、その次に杉元がチタタプし終えたところで、チカパシが土方の刀を取り出した。
チカ「これでチタタプしてもいーい？」
貴『…っあれは土方さんの…』
土方「…」
土方は少しの沈黙の後チカパシを膝に座らせ、一緒にチタタプをしてやった。
永倉「うわあ…」
貴『…』
自分がもしもチカパシのように小さかったら、土方はああして同じようにしてくれたのだろうか。
彼と家族であったならば…
白石「？どうしたの？」
ミツキはチタタプした跡がついた小刀を拭きながら、ふー…とため息をついて「別に…」とだけ答えた。
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年3月2日 7時
