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「生まれても私はきっとこの子を憎んでしまう」
運良く離婚できても
五条家は人手に渡った私を受け入れはしないでしょう」
ましてや加茂家の、悟さんを封印した男の子など
五条家にとっては窮地に追いやった憎い相手の子など……
「ならばと飛び降りた私な生き長らえてしまいました。
柔らかい土の上に落ちたことで命は落とせなかったものの
一時は本当に記憶がなく正気でいられましたが
記憶が戻った今、私は正気ではいられません。
だから愛した人との記憶をなくしてしまいたいのです」
私の言葉に声達は「アイワカッタ」と返したと思う
【嗚呼ナントイウコト……マタヒトリ繋ガレル】
先祖の悲しい声が私の耳に届いた
ずっと悲しいという思いのまま時が止まり
暗闇に繋がれてしまったのね
「それでも良いんです。
貴方達なら分かってくださると信じて呼んだのですから」
【願イハ願イ。聞キ届ケテヤロウゾ。
ダガ一度記憶ニ刻マレタ物ハ完全ニ奪ウ事ハ出来ヌ。
モシソナタガ何ラカノ理由デ思イ出シタ場合____】
気がつけば様々な啜り泣く声が脳裏に響いていた
【ソナタハ約束ヲ破ッタトシテソノ命ヲ落トス】
そう、この術が禁術とされた理由は
力を引き換えに魂は永遠に闇に繋がれるだけでなく
神に逆らったとして命を奪われるからだった
【ソレデモ良イノカエ?】
「はい……ただ、もし私が思い出した場合
夫になるはずだった者の仇を討ちたく
一日だけ時間が欲しく思います。
その時にあなた方のお力もお借りしたい故
こうして呼び起こしたのです」
他の人達が思い思いの反応をする中
それまで黙って聞いていた比較的劣化の少ないご先祖様が
漸く口を開いた
【良イデショウ】
目の奥が笑っていないその人は淡々とそう発した
鼻筋が通っていてパッチリとした目
俗に言うおちょぼ口
生前こんな顔をしていたのかと分かるほど
他の人達より醜い姿ではなかった
その時代に美人とされていたかはともかく
今の時代にいきていれば相当な美人とされたと思う
【ソノ願イ、聞キ届ケタリ】
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7、8ページ画像:ゆち式人外女子メーカー
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