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私は悟さんを愛してた
そこに何の偽りもない
心の底からあの人が愛しかった
ただそれだけだったのに
「はぁ……っ………はぁっ………っ……」
呼吸が上手くできない
そのせいで意識が朦朧として周りもぼんやり霞んでた
そこにいるのは誰…?
「Aさんしっかり!」
「だめだこれじゃ呼吸ができない、肺がやられてる、
家入さんに連絡を!!」
なにか声を荒げてるのはわかるけど
もう何もかもがぼわんとした感覚でよくわからない
「Aさんっ!」
急にガバッと体が動いた気がした
頭が痛いし何か目に入ってよく見えないけど
高専のバッジが見えた
「……傑…?」
なぁんだ、傑生きてるじゃん
「生きてるならそう言ってよ馬鹿……。
変な夢みてたじゃん」
貴方が死んでしまう夢を見た
どれだけ寂しくて苦しかったか傑知らないでしょ
「Aっ!!!」
「A……」
この匂い……
「お母様……?」
「Aっ…A……しっかりして……!
まだダメよ……ダメ…」
「お姉ちゃん……?」
何かを言う声は聞こえるけど
ぼんやりとしててよくわかんないや
「A…?…なぁに?」
「私……変な夢……みてた……」
「そうね」
「お母さん!?」
「黙りなさい瞳子。
Aは悪い夢を見たのよ。全部悪い夢だわ」
そうだよね、だって傑生きてたし
「先生……」
「いい、そのままにしてあげて。
Aは多分その体勢が楽だから。
何も訂正しなくていい。夏油傑として接してあげて」
遠くでボソボソとなにか聞こえたけど私には聞き取れない
そんな中傑の腕が私を強く抱きしめた
「…不思…議な……夢……だっ……たんだ…よ……」
「どんな夢?」
「……貴方が……100人殺しの…呪詛師になって……
10年後に……五条さんの手によって…命を終える夢」
なんであんな夢見たんだろう
でも
「すごく……辛かった……
傑が……この世……にいな…くなる…ことも……
五条さんに…それを……させた事も……」
「そう」
「でも……生きて…てよか…った……」
「うん…」
「私…ね……怒ら…な…いでね……
五条……さんと…結婚…し…ようと…してた…の」
「うん」
「ずっと…喧嘩…してて……やっ…と…仲直り…したのに……」
やっと結婚できるってところだったのに…
「神……様は……認め……てくれな…かったの…かな。
とうとう……結…婚でき……なか…ったの……」
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