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呪術師なら大抵の事には動揺しない
たとえ目の前で仲間が殉職しようとも
己のすべき事を全うする為前に進んでいく
それはAも例外ではなかった
目の前で誰がどうなろうと気が狂うような事はなかった
今までは
だがかつて苦楽を共にしたはずの側近の変わり果てた姿は
Aをいよいよおかしくさせてしまった
否、目の前で自害などされたらそうもなり得るかもしれない
足元に横たわる側近は自責の念にかられて命を絶った
はっきりと言えば死滅回遊とは何も関係の無い
「無駄死に」
しかもその原因が自分であったのだから
たまったものではなかったのだろう
我を失ったAの暴走は凄まじいものだった
「コガネ、ルールの追加。
加茂Aを殺した者は獲得特典を20追加する」
羂索は目の前の惨劇などどこを吹く風でそう告げた
「美しい主従愛も時には考えものだね。
それで互いに殺し合うようなことになるんだから」
それだけいうと我を忘れ肩呼吸をするAに背を向けて
風のように去ってしまった
綺麗に染められた路考茶色の髪は
この戦いで白髪へと変わり
胸あたりまでだった長さも地に付くほど伸びきって
更にボサボサと手入れの行き届いてなさそうな髪になり
整えられていた爪も先が尖った挙句指一本分に伸び
眼は光を通さぬほど黒く、瞳は禍々しい赤色になり
それがかつて同じ人間であったとは思えぬ程
恐ろしい姿へと変わっていた
それでも人々はルールの追加のせいなのか
なんの躊躇いもなく彼女に襲いかかり
人間をやめた彼女を前に返り討ちにあい崩れ落ちていた
ただ時折、うわ言のように
「悟さん、悟さんどこ」
と地獄の底から出すような
幾つもの嗄れた声を一つの口から発しながら
化け物のようなナリのものが先を急いでいた
「っ!Aさん!!??」
そんな彼女を見て声を上げたのは
乙骨憂太、禪院真希、そして虎杖悠仁だった
__百鬼夜行のあった12月
結婚祝いを兼ねて
学校内で担任とその婚約者の宴が開かれた時
夏油傑が宣戦布告に訪れたあの日が
乙骨と真希にとって初対面だった
百鬼夜行の後、夏油傑と付き合っていたことを知り
後ろめたさを抱えた乙骨に向かって
声をかけてきた事も記憶に新しい
虎杖の初対面は姉妹校交流会後だ
彼女と担任の馴れ初めから現在に至るまでの話を聞き
釘崎と涙を流して聞いた事もある
そうとは知らない彼女はわが子同然の伏黒恵に会う度に
自分や釘崎にもと手土産をくれる人
というのが虎杖の印象だった
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