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約一ヶ月後に迫る合同ライブ――『エルダーハンド』に向けて、両ユニットはそれぞれのレッスンに励んだ。

マヨさんは二つのユニット間を行き来し、出張という形でニューディの敷居を跨ぐ。その時はおれ達も三人で協力して見栄えの確認やらハモリの練習やら、出来ることに努めた。

そして今日は貴重な合同レッスン。一つの大きなレッスン室に七人が集められていた。

「――はい、そこの『朔間』の方。ワンテンポ遅れています、前列は合わせられないんですから後列の意味を成して下さい」

「…はぁ…?」

「一彩さんは横を揃えて。僅かにズレていってますから立ち位置を意識して下さい」

「う、ウム」

「それからこの曲は裏取りするとタイミングが掴めると思います。裏拍を意識して下さい。ではもう一度入りから」

マヨさんは躊躇なくまた曲を流し始める。多分この中で一番体力の無いであろうおれはもう既に額に汗が滲んでて。息切れも少ししてるけど、今日のマヨさんにはこれっぽっちも響かないらしい。

何とかその一回を終えると、タッツン先輩の提案で休憩が挟まれるようになった。…おれがへたばってたのバレてたのかなァ…

「今日のマヨさん、いつもよりスパルタだねェ…やっぱりあの『Knights』とだから気合いが入っちゃうのかな」

ペットボトル片手に、近くに居た先程の救世主に話しかけてみる。タッツン先輩は同情するように笑って、マヨさんの方をちらりと見遣った。

「そうですな…でも、休憩時は普段通りみたいですよ。ほら」

見ると、マヨさんは一人ひとりに全力で頭を下げていた。凡その理由は分かるけど、とてもさっきまで指示をしていた人とは思えない。

「あはは…ほんとだ」

「…マヨイさんの立場じゃないから言える事かもしれませんが、俺はそこまで気負いはしていませんな。寧ろマヨイさんの実力を広められて嬉しく思いますし…」

「それは分かる。おれもちょっと誇らしいよォ」

何故かあの時、自分が褒められたようなそんな錯覚に陥った。それぐらい『ALKALOID』がリンクしてるって事かなァ…

「ふふ…。…俺は期待はずれなんて決して言いませんから、マヨイさんにはいつも通り指導して下されば十分良いものになると信じています。だって、彼が目指すものと俺達が目指すものはいつも一緒ですからな」

「やば、かっこよ…」

「え?」

戸惑いがちに笑うその人からは後光が差して見えた。

丁度その時、誰かの携帯が着信を告げる。

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作者名:冴波せつ | 作成日時:2020年5月4日 12時

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