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コウハ「なぁ――エルー…そろそろ出て来たらどうですかー？」
受付テーブルに肘をついて、ボールをそれらしく指で転がす。エルの目が回らない程度にボールが指をすり抜けていく、少しだけ面白くなってきた。
昼ご飯を食べ終えてから、用事で外に呼ばれた二人に俺は育て屋の代理を任された。仕方は昔から変わっていないし手伝ってくれるポケモンも居るからさほど心配はしていない。からエルの方を構っている訳だが、うんともすんとも言わないのが現状だ。
コウハ「…いらっしゃいやせ！いらっしゃいやせ！」
ブイズも気持ち良さそうに寝ているから実質俺一人。
コウハ「…違うな…らっしゃいせ！らっしゃいせ！」
声出しの練習をやってみていると、勘違いした二人のポケモンが顔を覗かせた為手を顔の前で合わせて謝っておいた。
いやしかし暇ではある。育て屋のお世話を初心者がやる訳にはいかないので受付だけの代理だが、そもそも人が来なくては何もする事が無い。…掃除でもするかと思い立ち上がろうとすると、それはいきなり現れた。
コウハ「…お？」
育て屋入口の左側にあるドアから人が出てきた。静かに歩み寄り、その手にはお盆とお茶が乗っている。
「…どうぞ。」
コウハ「……あっ、どうも…」
コトリ、と机にお茶を置かれ、思わずつられて頭を軽く下げる。答えるように笑いかけた拍子に、その人からはシャンッと軽やかな鈴の音がした。
コウハ「………」
紅白の紐で結われた透けるような金色の髪を揺らし、その人は部屋に姿を消す。そのあまりの静けさに何も言えずにぽかんとしてしまった。不思議と今度は鈴の音はしなかった。
あんな人居たっけな、手伝いに来てくれる人なんて聞いてないけどな…いや知らない内に雇ったバイトさんかな？まぁ育て屋さんならバイトさんくらい居るか。
なんて一人で勝手に納得した俺は気を取り直して椅子に座る。と思ったらいつの間にかその人は壁にもたれ掛かっていた。その気配の無さにまた吃驚する。
エルレイド「はぁいお姉さん、俺と午後のお茶を楽しんでよ！」
コウハ「！！」
女の子が来たからかエルが素早く飛び出て即座に近寄る。すばやさ上がったかな？いやそうじゃない、奴を連れ戻さねば。そう思い手を伸ばすと、エルが妙にげっそりした顔で踵を返して戻ってきた。
エルレイド「チッ……やめだやめ。」
コウハ「！？」
何があったのか。一瞬にして豹変したエルの態度を些か不審に思っていると、一つの凛とした声が聞こえた。
「…俺ェ、男だよォ。」
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作者名：らっこ | 作成日時：2020年2月24日 18時
