Episode9 -5 ページ10
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その日の夜、自分の部屋で私は机に向かっていた。
小梅ちゃんから送られてきた今日の授業内容を自習するために。
チャットに表示された画像を時折指でアップにして確認しながら自分のノートを書き進めていた私は、突然切り替わった画面と震えだしたスマホに驚いて咄嗟に手をひっこめた。
「……知らない番号…？」
先ほどまで小梅ちゃんとのチャットが表示されていた画面は今暗くなり、そこに電話番号が並んでいる。
ブー、ブー、と振動するスマホは紛れもなく着信を告げていた。
「ちがう……」
この番号、見覚えがある。
まさか…。
「潤、くん？」
恐る恐る、私は通話ボタンに触れた。
ピッとコール音が切れる。
『もしもし、A？』
「…潤くん…」
『よお。よかった出てくれて』
たった一日聞かなかっただけなのに。
耳に届く潤くんの声に涙がこみ上げる。
こぼれそうなそれを指の背で拭い取って、私は何度か深呼吸をした。
「どうして、電話……」
昨日、雅紀が消したって言ってたのに。
あの日だけ特別って約束だって、言ってたのに。
『小梅ってお前の友達を待ち伏せして聞いた』
「小梅ちゃんに…」
『待ち伏せも慣れたもんだしな』
そう言う潤くんはどこか得意げだった。
ヤンチャで自由な彼そのもので、泣きそうなのに笑顔になる自分がいる。
正門の壁に寄り掛かって私を待っていた潤くんの姿が思い浮かぶ。
二度、交換して。
二度、私の中から消えた、潤くんの連絡先。
三度目のそれが今、再び私と潤くんを繋いでいる。
『お前を頼むって言われたよ』
「小梅ちゃんがそんなことを？」
『ああ。…いい友達だな』
優しい声色で潤くんがそんなことを言うから、またちょっとだけ泣きそうになる。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
