Episode11 -4 ページ24
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演奏は無事に終わった。
パーティーから本邸に帰宅するとどっと疲れが押し寄せる。
「疲れた…」
「お嬢様、ドレスはお脱ぎくださいね」
「わかってるわよ」
ドレスのままベッドにダイブしようとした私に雅紀が釘をさす。
ワインレッドのドレスを脱いで部屋着に着替えると私はドレスごと雅紀を部屋から追い出した。
「お嬢様、押さないでくださいよっ」
「もう疲れたから寝る。おやすみ。お父様に上手く言っといて」
「お嬢様…！」
まだ何かを言いかけた雅紀を扉の向こうに押しやって扉を閉めた。
ご報告が何とかとか聞こえた気がするからこれからお父様のところに行くんだろう。
悪いけど任せた雅紀。
そう思いながら鍵を閉めた。
この鍵はもともと私が部屋から勝手に出ないようにと子供のころにお父様が付けたものだ。
独りぼっちには独りぼっちなりに雅紀の顔すら見たくない時なんかもあってこの鍵にはお世話になったけど。
こんなものがなければ自由に世界へ飛び出していけるのかなと鳥かごの鳥的にも考えてみたりした。
小梅ちゃんの言うところによると今の私は鳥かごを壊すタイプらしい。
ベッドに突っ伏してスマホを手に取る。
小梅ちゃんから「無事に終わりましたか？」と連絡が入っていた。
それに返事をしてから電話アイコンをタップする。
表示されたテンキーにもう覚えてしまった潤くんの電話番号を打ち込んだ。
『もしもし、A？』
「潤くん、今大丈夫？」
『家だからチビたちがうるさいかも知んねーけど。ほらお前ら、ちょっとあっち行ってろ…悪いな』
「ううん、にぎやかでいいね」
電話の向こうからがやがやと他の声が聞こえている。
『そうか？』
「うん、うちは静かだから羨ましい」
『なら今度来い。ニノもよく来るし、こいつらもお兄ちゃんばっかよりお姉ちゃんがいる方が喜ぶだろ』
「そうかな？」
『そうだよたぶん』
なんてことはない他愛ない会話は愛しいもので。
声だけで笑う潤くんの顔が想像できた。
「それなら…行きたいな」
紛れもない本音がこぼれたのはきっと演奏を終えて安堵したから。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
