【逆ハー注意】男装腐女子の魔法科男子校潜入記【3】

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ふぅ、とため息をついて二枚目のバンダナを邪魔にならないよう左手首に結ぶ。
リクをなんとか止めて、頬のかすり傷だけで済んだ。リクの攻撃は恐ろしいし素晴らしく速かったから、あと数秒でも遅れていたら負けていたのは私だろう。
やっぱり一瞬でも気を抜けない、このバトロワ。

髪をかき上げ、息を整える。すぐさま次の戦いに挑まねば。
幸い私の周りでは一対一の戦闘が行われていて、まだ私に意識を向けられてはいない。今のうちに――

「……っ！」

ひゅ、と息をのみ私は思い切りその場から飛ぶ。
先ほど立っていた場所から少し離れた位置に着地し、すぐに振り返る。一見そこには何もなかったけれど、よくよく見れば地面に影がある。そしてそれはおそらく、私のでも誰の影でもない。

「え、えぇええ……」
「……よく避けたな、クソ猿……」

にぃ、と歪んだ笑みを浮かべた会長が、そこに、いた。

「ちょ、待って、か、会長？ なんでここに？」
「テメーを一瞬で負かすために決まってんだろ」
「な、なぜ？ い、一緒に生徒会やってる仲間じゃないですか！」
「あぁ？ テメーみてぇなやつ知らねぇなぁ。……あぁ、食堂でこの俺に盾突いたクソ新入りのことか？」
「やっだーこの人まだ根に持ってるー！！」

背筋がぞわぞわするような殺気と威圧感の中心にいるせいで、手汗が止まらない。
これはやばい。無知な私でもわかるけど、この人には勝てない。一発で退場だろう。
じりじりと後ずさる私を見て、会長はさらに愉快そうに笑みを深める。あぁドS。本当ドS。美しいほどドS。惚れ惚れするほどドS。私に向けられてなければ！

「おら、そこじっとしてろ今すぐお前を木くずにしてやる」
「えぇそれではい勿論ですってじっとしてるほうがおかしいでしょう！」
「チッ、ごちゃごちゃうるせぇ！」

忌々し気に舌打ちする会長は、その手をバッと私の目前に突き出す。
その手の中心から吐き気がするほど嫌な予感がして、私はぐっと息をのむ。あぁクソ、足が竦んで動けない。この人と戦う覚悟はまだ、できていない。

「さっさとひれ伏せ」

騎馬戦で見かけたのと同じ剣が、暗闇の中から生み出される。
あぁ、だめだ。動かないと負ける。のに、動けない。

「っ、ぅ――！」
「ルーチェ！」

押し殺した悲鳴が上がる寸前、劈くような聞きなれた叫び声が響き渡る。
刹那、目の前を一閃の光が走り、会長の剣はその光にかき消された。

「下がってろ、A」
「エド……！」
「こいつは俺がぶっ倒す」

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