男装腐女子の魔法科男子校潜入記

38ねむ ページ39

「ああああああぁあああ！」
「うおぉおぉおおおお！！」
「ぐぅ、ああぁあああ、あがあああぁあ！」

地獄絵図かよ。
魔力値が青いクラスメートからどんどん力尽きて地面に突っ伏していく。
普段は「きゃっ」とか「もーやだぁ」とか抱きしめて舐めまわしたい可愛いチワワですら「うおおお！」とか野太い声を出していて思わず目をつむってしまう。こんな彼らの姿見たくなかった。

「確かに、これは、きっっつい……」

私も他人事ではなく、かなり呼吸が荒い。
魔力は体力と似ていて、だけど体力よりも重要なものだ。体力がなくなっても生きていけるけど、私たち魔法使いは魔力がないと深刻な脱魔症状が起きる。まぁ脱水症状みたいなものだと考えていいかも。最悪死に至る。
魔力がすくない女性は脱魔症状へほぼ抗体ができているようなもので、もともと魔力がすくない身体として生きているからその症状に陥ることがほぼない。だから例えば、間違ってこのように魔石に触れてただでさえ少ない魔力をほぼすべて枯渇されても、何も異常なく一日を過ごせる女性が多い。例外も多いけど。

その例外が魔力値が多い私で。

「おえっ……吐きそう……」
「隣できたねー話すんなボケ！」

平気で悪口を言ってくるエドも、額から汗が伝っている。
これは私が今吐いたらもらいゲロをするな。ウケる。
笑い事じゃなかった。

魔石は色が変わらなくなったらすぐ離さなければならない。じゃないと永遠に魔力を吸い取られる。
そしてこの授業は、それを実行し魔力をわざと枯渇させ体の内側から無理やり魔力を生産させるとかいう過酷な授業である。虐待だ。絶対虐待だ。

「うあぁああああ気持ち悪い！ 無理無理無理！ こんなんで魔力増えんのかよー！？」
「うだうだ言うな！ こっちのやる気が削がれるだろうが！」
「そうはいってもー！」

私の魔石は赤から変わることはない。確かになんか授業の初めに比べたら爛々と燃える赤になっている気がしなくもないが、そんなことどうだっていい。私はこれ以上魔力なんていらない。早く授業終われ。先生は早く生徒に襲われろ。受けだお前なんて。総受けだ。バカ。

「ううえええ……」

吐き気を必死で抑えつつ右を見てみれば、ふとエドの赤が少し濃い気がした。私のに比べて、こちらはワインレッドに近いかもしれない。
授業はじめの時、エドの赤はもう少し明るい赤だったはずだ。
効果あるのかこの授業。まじか。

どうでもいいわ。はよ終わればぁああーーーか。

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