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『晴太、離れないでね』
「ちょ、A姐!無理だって!」
Aは両手に銃と刀を持ち、晴太は必死に走る。
そんなカオスな状況になっているのは、ついに鳳仙の配下に見つかってしまったからだ。
「青薔薇様も考え直してください、賊の守りをするなんて言語道断です!」
『うるさい』
そして斬りつけられる一人の配下。怯える他の仲間たちに、Aは微笑んで言った。
『大丈夫、峰打ちだから』
「全然大丈夫じゃな…」
次の瞬間、ブシャッと聞いていて気持ちのいい物ではない音が響き渡った。後ろを追ってきていたはずの女たちの気配も消え、Aは咄嗟に晴太の目元を隠そうとする。
「こんな所で何してるの?」
『…思ってたよりも早かったな』
歩み寄ってきたのは、両手を真っ赤な血に染めた神威だった。
「ひょっとしてお母さんでも探してるのかい?」
『晴太』
「あり?どうしたの?寒いの?大丈夫?」
『君が怖いから震えてんのよ、彼』
そうAが言うと、いつでも目を一直線のように結んでいた神威が少しだけ目を見開いた。
「…どこかでみたと思ったら旦那の三味線の」
『覚えててくれたの?嬉しい』
「うん、まさかお姉さんがなかなかやるヤツだったなんて思わなかった。どうだい、俺と一緒に一発殺りあってみない?」
『却下。ロマンのかけらもない』
「ちぇ、手厳しいな」
未だに震えている晴太は、Aの紺色の着物の裾に隠れるばかり。
そんな彼をみて、神威は血に塗れた手で自分を指し示した。
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作者名:なんなん | 作成日時:2021年4月30日 17時