坂田銀子(仮)に成りまして。【銀魂,成り代わり】

第一訓 よろずの心を持て ページ3

2015年〜???

坂田銀子__いいや。坂田銀子に成る可くこの世に送り込まれた者の名は何だったか。今となってはその当の本人すら存じないのだ。

「(何...これ。血...!?)」

銀子になるべく”少女”はその紅に染まった地面に立ち尽くした。しゃがみこむ事さえままならない彼女の思考回路はある程度逆戻りされて修正を少し加えられて居たのだ。

__まぁ、だからと言って、前の彼女と全くの同一人物に成長するまい。

つまりは、環境で変わるのだ。性格は。
然しながら、だからと言って坂田銀時と全くの同じ性格になるとも限らない。
彼女の可能性は未知で溢れていた。

呆然と立ち尽くす彼女の目には何が写ったか。当事者で無い者が語る事も出来ないが、ただ一つ云えば恐怖だった。

生物に必ず共通する感情は何か、それは恐怖だ。雑草だって、一種のトラウマに駆られる事もある、ミリ単位以下の微生物だって恐怖で身を守ろうとする。

彼女もまた、生物だった為にその流れに慕い、恐怖を脳裏に焼き付けたのだった。
此処で、追い遅れた記憶が脳内を交差する。自分が殺めた経緯にその温かみ。

「おや、鬼が居ると聞いたのですが。これはまた随分ど可愛らしい鬼ですね。」

先程迄視界の端にも、肌の感覚にも無かった刀を身構える彼女。

その瞬間、坂田銀子というこの世界の主人公が誕生した。
後に自分は殺伐とした世界で生き残る、だなんて覚悟を決める事を、この1面から見て理解出来るほど聡い子供でもなかったが、確かにその瞳は紅に染まって居たのだった。

すうっと、吸い込んだ錆びた空気。
漂うのは背徳感と心の臓器の跳ねる音だった。

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