プロローグ5 -決意の堕天- ページ5
皆の墓に花を添え終わり、やることも無くなった。
太陽は既に傾き始めている。
俺はふらふらと自分の家に戻った。
貴『……ただいま。』
誰も居ない、と頭では分かっているのに
つい言ってしまう。
はぁ、とため息をついて床を見ると
___自分が昔から欲しがっていた
サファイアとルビーのブレスレットが落ちていた。
俺は震える手でそれを取る。
サファイアとルビーのブレスレットがそれぞれ1本ずつあり、それが1点で交差している。
その交差点には
涙型をした大きな水晶がついていた。
少し動かすと、しゃらり、と綺麗な音がした。
__間違いない。これはあのブレスレットだ。
俺はそう確信し
何故ここにあるのか、という疑問に至った。
その疑問の答えは、しゃらり、と音を立てて
俺の心は
_____闇に染まった。
ルビーのブレスレットの裏には
「A、誕生日おめでとう。愛しています。」
知的な母の言葉が。
サファイアのブレスレットの裏には
「おめでとう。これからも元気に育て。
…大好きだぞ。」
不器用な父の言葉が。
___それぞれ、掘られていた。
あぁ、ああ!!!
何故だ、何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!!!!
なんでこんなにも素晴らしい人達の命を
神は奪ったのか!!!!!!
俺は錯乱しつつ、泣き叫びながら天に喚いた。
『赦さない、赦さない!!!
神なんて____絶対に赦さない!!!!!!」
その途中
綺麗だった白銀の髪は、黒く染まった。
充分泣き叫んだ後、ゆっくりと立ち上がり
ブレスレットを手首に付けた。
___うん、丁度良い。
俺はそう考えながら、
父のマントと父の服
母のイヤリングに母のベルト
それらを手に取り、身に纏う。
年齢は多分12歳だが
体はまぁまぁな背丈だった為
父の服は、すこしブカブカなくらいで済んだ。
そして___あの粘土板の裏にあった、
どこか普通とは違う土の塊の隠し場所。
その土の塊は、俺と共に捨てられていたらしい。
俺がそれを掴む形で。
その隠し場所に行き
それを手に取った瞬間、
その土の塊は、大きな槍になった。
とても禍々しいが、何処か神々しい。
そんな槍だ。
俺は少し驚いたが、
すぐにその辺の紐で自分に括り付ける。
何かあればすぐに抜けるようにした。
枝に布袋を縛り付け、
その中に食料を詰め込んだ。
そして、皆の墓の前まで行き、手を添えると
俺は踵を返し、街の出口に向かった。
___それを最後、闇に溶けるように
黒髪と共に消えた。
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ヨル(プロフ) - もなかさん» 感想有難うございます〜!頑張りますね! (2020年4月23日 1時) (レス) id: a8e58dbd43 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - すごいおもしろいです!!!更新頑張ってください!! (2020年4月22日 15時) (レス) id: ba3cbcb107 (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - ディアさん» 有難うございます〜!頑張りますね!(*^^*) (2020年4月16日 12時) (レス) id: a8e58dbd43 (このIDを非表示/違反報告)
ディア - めちゃめちゃ面白いです!お話の続き楽しみにしてます!更新頑張って下さい!^ - ^ (2020年4月12日 22時) (レス) id: f4badc1d91 (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - 柚夜─YUYA─さん» 感想有難うございます!面白いと言って頂けて嬉しいです〜!更新頑張りますね! (2020年4月9日 23時) (レス) id: a8e58dbd43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑飴 | 作成日時:2020年1月26日 20時