誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに (ページ37)

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17.恋は下心ページ37

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「えっと恋に落ちる、ですよね。……失礼ですけど、恋愛経験というのは？」

恋愛経験……この場合は交際の有無かな。となると、

「両思いでっていうのはないです。完全に流れというか、告白されたからってだけで……」

「なるほど……その時間の中で、枡川さんの気持ちの変化というのは……？」

「……あまり無かったと思います。本当に友達関係の延長線上って感覚で。2人でいることが極端に多くなったっていうのはありますけど、本当にそれだけだったというか」

こうして言葉にしてみると、向こうには申し訳ないことをしたと思う。

ただ本当に当時の私は、一緒にいるのが楽しかった、それだけの理由で向こうからの告白にOKを出した。
あの人はちゃんと、私を1人の女として見てくれて、それで好意を持ってくれてたというのに。

こうして自分のそれを反芻すると、初恋すら分かってないんだろうな。

「んー……なるほど」

金城さんは考えながら、言葉を選んでいるようにも見えた。
まあ二十歳超えた女がいきなり「初恋って？」って聞いたら、そりゃあ誰しも困惑するに違いない。

「……私もこういう仕事をずっとしてきたので、あまり語れるようなことは皆無に等しいのですが」

「はい」

「表現として挙げられるのは、”世界が輝く”、”その人しか見えなくなる”、”時が止まる”、”鼓動が早くなる”……っていうのでしょうか」

完全受け売りなんですけどね、と彼女は続けた。

実際金城さん自身の経験はなくても、それに近い経験があるからこそあんなにお芝居に深みが出ている。
それは彼女の感受性の高さと、それを伝えられるだけのアウトプット能力があるからだろう。

「今のって、過去に出た作品での話ですか？」

「そうです、初めてメインヒロインやった学園ものです。……10年くらい前かな」

「もうそんなに経つんですか……」

「あの時は本当に周りに迷惑かけてばかりでしたよ……」

そう言いながらも金城さんはどこか懐かしむように目を細めた。

それだけで絵になるんだから、羨ましい限りだ。

”その人しか見えなくなる”

……まあ恋は盲目という言葉もあるし、実際私も例に漏れず誰かに恋したらそうなるのかもしれない。だし、世界が自分とその人しかいないような感覚に陥るのであれば、『付き合いたい』と願うようになるのも必然的だろうな。

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