肆 ページ4
「家まで送ってやっから、明日10時に店に来い。」
「……なんで?」
「清掃員として雇ってやる。
俺のバイクのガソリン代とダンブルシート使用代とテメェの根性叩き直し代分、ちゃんと働けよ?」
意味がわからない。
ガソリン代とダンブルシート代はまだわかる。微妙なラインだけど。
それ以上に根性叩き直し代ってなに?
「あの、根性叩き直してなんてひと言も…」
「佐野真一郎」
「え?」
「俺の名前、佐野真一郎。」
「そうじゃなくって、根性叩き直してなんて」
「んじゃ帰るぞ」
日本語が通じねぇのか?
佐野、と言った男は俺の首根っこを掴んでズルズルとバイクのある方向へ連れていく。
ぴよんっと身体が宙に浮いたかと思ったら、いつの間にかダンブルシートに座っていた。無理矢理ヘルメットも被されて、佐野の大きい背中で視界が埋め尽くされる。
敵わないなって、その時にやっとわかった。
「……………………天谷、凛太郎」
大きな背中に顔を埋めて、小さく言う。
「おう、リンたろー。よろしくな。」
_…日本語通じるじゃん。
なんなんだよ、ほんと。
車体と少し長い髪が激しい風に揺れる。その風が心の隙間に入り込んで、その穴を埋めてくれているみたいだった。
気持ちいい。
涙が出るくらい、気持ちいいなぁ。
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作者名:ぬんもも | 作成日時:2021年8月20日 18時