ガセネタとかマジで最低だぞ、お前！ ページ32
.
「いや〜！よかったよかった！飼い主に会えて、この子も喜んでいるに違いありません！」
街中の広場の隅で、自分に媚びを売ってくる男性に、きりやんは確かに殺意を覚えていた。
男性の隣では、人懐こそうな大型犬が尻尾を振っている。
頭には角が、背中には羽らしきものがある大型犬が。
きりやんはその羽をむんずと掴み、引っ張る。
すると、紐のようなものが外れて犬の背中からあっさり外れた。
「こんなんで騙されるとでも？」
角も羽も、見るからにハリボテだ。
睨みつけると、男性は明らかに慌てた様子で口ごもる。
「あ！！……いや！！これは、その……！！………な、何かの間違いだったようで……」
男性はいそいそとその場を離れ、大型犬は尻尾を振りながらその後について行った。
きりやんは苛立ちを溜め息と一緒に吐き出す。
きんときが作った貼り紙に、僅かながら謝礼金を出すと記載した結果、こういったガセネタが大量に集まる結果となってしまった。
次から次へと、謝礼金目当ての人間に声をかけられ、きりやんの苛立ちは最高潮だった。
それでも、Aに関係のある話かもしれないと思うと、聞いてみないわけにもいかず、こうして時間を無駄に浪費している。
何度目かの無駄足に落胆し、広場を後にしようとした時、きりやんはまたしても声をかけられた。
「あ、あの………、きりやんさん」
「はぁ〜………、はい？」
きりやんは大きく溜め息を吐き、苛立ちを隠さずに振り返った。
すると、振り返った先で小柄な女性がびくりと肩を震わせた。
女性は声をかけておきながら、おろおろと視線を逸らす。
「………………なにか？」
可愛らしいが、気弱そうなその人は、初対面のはずだが、
きりやんは妙に気持ちがざわつくのを感じた。
「あ、あの、……………す、すみません！やっぱり何でもないです！」
「ぇえ！？ちょっと！」
女性はくるりと踵を返すと走り去ってしまった。
きりやんは咄嗟にその後ろ姿を追いかけた。
何故だろう。
一度も会ったことの無い相手のはずなのに、何かが引っかかる。
女性が走り去った路地裏に足を踏み入れたが、
そこから先は入り組んでいて、女性の姿を見失ってしまった。
まだ近くにいるだろうと少し進んだ先で、
きりやんは足を止める。
路地の真ん中にちょこんと鎮座する白い毛玉に、思わず駆け寄った。
「ﾋﾟｨ」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 763人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「WT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すみれいん(プロフ) - 久しぶりにまた読んじゃいました。ハートがまた押せるようになったのでうふふですね…！！やっぱこのお話好きだし、いつ飼い主じゃなくなるのかなぁってむふむふしちゃいます (5月15日 11時) (
レス) @page46 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - ガナッシュs2さん» 通知が来てちょうど読めるくらいの時間があったので一からまた読んじゃいました…！やっぱりたまにあるクスッとする所好きです笑 (2023年1月10日 2時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ガナッシュs2(プロフ) - すみれいんさん» いつもハートありがとうございます！こちらもバタバタしていて更新できてなくてすみません！…こちらの続きもそのうち……！ｗ 必ず………！！ｗ (2023年1月9日 21時) (レス) @page46 id: 1465e56711 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - ガナッシュs2さん» バタバタしておりお返事滞ってしまいました◯¬ 寝れそうになく読みたいと思い再び読みに来ました！しかもハート押せます。キタコレ！！となっております (2022年10月10日 23時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ガナッシュs2(プロフ) - トキさん» 番外編も気に入っていただけてよかったです！！！せっかくの異形夢主が人間に戻っちゃったので、番外編で獣ver再登場してもらいましたｗ (2022年9月25日 0時) (レス) id: 1465e56711 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ガナッシュs2 | 作成日時：2022年8月3日 17時
