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あたしが色々考えていると後ろから視線を感じた。振り返ると、何故か困り顔をしている翼くんと汗をダラダラ流している蜜柑。
「A……あんな、よーちゃんがAにお願いがあるって…」
「え？」
蜜柑の言葉で心臓が高鳴った。なんか嫌な予感がする。嫌な予感というものは当たるもの。
どこかつまらなさそうに息を吐いている陽一くんは３歳児らしくなかった。
「…ねーちゃ、」
「へっ……ベア？」
あたしを見かけると、嬉しそうにとてとてと駆け寄ってくる陽一くんが指差した方向に、あたし達を睨んでいるクリスマスバージョンのベアがいた。
その時に分かった。
これは陽一くんのお願いじゃなくて“命令”だって。
流架の動物フェロモンのアリスは、ぬいぐるみ相手では効力を発揮しないもんね。
あたしは臨戦態勢をとっているベアの交渉係にされた。ベアのオーラが“触れたら切れるぜ、ナイフのように”と物語っている。
昨日、学園に来る前にお母さんが持たせてくれたテディベアを失くしてしまったとのこと。どうやら陽一くんはベアと遊びたいらしい。
お仕事中のベア、かあ。邪魔されるのも小さい子も嫌いだったよね…いいよって言ってくれるかな。
「…あのねベア、聞いて欲しいんだけど…」
ベアと同じ高さになるようにしゃがんだ。後ろで蜜柑達が感嘆の声を上げている気がした。
「翼先輩っ…ベアが大人しくしとる！何で──！？」
「……ベアも、分かってんだよ。
自分の大切な人の心を救ったのが、誰かってこと…」
ベアの手を握った。ベアは言葉を話さないけど、でも、伝わってる。伝わるって信じてる。
「…陽一くんと少しの間で良いの、遊んで欲しいっ、」
───ベア、お願いがあるんだ。
僕は、いつも彼女の傍にいてあげることは出来ない。
だから、代わりに
彼女が泣きそうな時、苦しい時は
傍にいてあげて欲しいんだ。
「楽しんで欲しいの、笑って欲しいの…っ
陽一くんだけ、１人で悲しい思いのクリスマスなんて、そんなの悲しいもの、」
僕は彼女に会ってから心の底から笑えるようになった。
彼女のお陰で毎日が本当に楽しいんだ。
「…ベア、お願いっ！
あたしの大切な人なのっ、お願いっ、」
ベア。お願いだよ。
Aは僕にとって君と同じくらい大切な人だから。
───頼んだよ、ベア……
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作者名：未来 | 作成日時：2022年11月24日 13時
