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“あたしは大丈夫だから。大丈夫だからね、棗くん。棗くんもどうか無事でいて”
「…あいつらは多分、大丈夫だ」
あいつの声が聞こえた気がした。そう思いたいだけかもしれねえが、それでもあいつの声が聞こえたんだ。
「命をとられるような事にはならない…
──それよりも、」
今はただ、前に進むことだけ考えるべきだ。
「今からはこっから、どうあいつらをとりかえすかだ。目的以外によけーな手間かけさせやがって」
「…っ、そーだね。さっきの事から考えてもあいつら、俺達をバラして１人１人潰してく気だろうし」
棗の言おうとした先の言葉を継いで、璃音が話した。
「こっからあいつらを追っかけるにしても、ゴホ…なるべくバラけないよう……ゴホゴホッ」
ちくしょう…この
「棗…」
「……」
「……」
ガチャン、ウィーン…
翼達が心配そうに棗を見ていると扉から重たい機械音がした。
「おい ドアが開い…」
「え………」
「上下式ておい…」
驚く翼達が見つめる中、扉は上へと上がった。どうやら扉は開閉式ではなかったようだ。ポカーンとなるも気を取り直す。
誘い込むように開いた扉。これが罠だとしても彼らには進むという選択肢しか残されてなかった。
「蟻地獄にひっかかったのは２匹だけですか」
アジトの奥で御原が呟いた。A達を蟻地獄へ落としたのは彼の作戦だったようだ。
「まあいい。どっちにしろ全員、籠の中の鳥だ。残りの４人を大広間まで案内して…」
「幹部」
彼の言葉を遮り、モニターを見ていた部下が口を開く。表情にどことなく焦りが窺えた。
「この侵入者、組織のデータと念のため照合してみたんですが、この子供…あの
手早く操作して、カーソルを黒髪の少年に合わせて情報を表示する部下。しかし、彼の報告は終わらない。
「それだけではありません。どうやら、こちらの子供の名前は日下部璃音……どうやら、あの銀狼のようです」
報告を聞いた御原は椅子から立ち上がって、モニターに近付いた。
「ほう、それは…高名なる我が
これは楽しみだ…ボスにこの朗報をすぐに伝えなさい」
またとない機会。モニターに映る彼らを見つめながら、御原は薄気味悪く微笑んだ。
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作者名：未来 | 作成日時：2022年6月27日 14時
