747・学園生活編 シャッフル香事件 ページ10
体育祭も無事とは言えないが、お咎めなく終わり、季節は暖かな春から蒸し暑い夏へと移り変わろうとしている。
「白崎さーん！おはよーう！」
「夏服すごく似合ってるよ！可愛い！」
「…あ、ありがとうっ、皆も可愛いよっ」
アリス学園は今日から衣替えで夏服に変わり、皆ラフな格好だ。
「Aちゃーん、蜜柑ちゃーん、蛍ちゃーん」
「わ──、みんな夏服似合ってるー！！」
「えっ、そんな…
蜜柑ちゃん達の方こそ、すごく似合ってるよ〰︎︎〰︎︎」
「ええ──そうかな──」
「おっはよーしらさきっ、さくらっ！夏服アターック！ほめあいキモイ☆」
「夏服キッーク、けんそんキモイ☆」
「夏服素通り」
夏服が似合っていると誉め合うAと蜜柑へ、心読み君からは蹴りが、キツネ目君からは体当たりが炸裂した。２人の表情は清々しい笑顔だった。
体育祭を終えた辺りから、クラスメイトとAと蜜柑の
間にあった乖離や誤解はサッパリ解けて元通りになり、以前のように話しかけてくれる人達が増えた。
「も───っっ、コラ──！！いたずらっ子達め───☆」
「｢｢うわ、きんも！！｣｣」
「………」
華麗にツッコんだ蛍とスミレ、璃音は先を歩くAの後に続く。そしてAは戸惑いなく教室の扉を開けた。
「おはようっ、みんな、っ………」
教室に入って見えたのは窓枠に独り腰掛ける棗と、椅子に座って黙り込んでいる月。
月は兎も角、棗は最近一人でいることが増えた。流架でさえもあまり寄せつけなくなって、会話は見られない。最近、気づいたら教室にも寮にもいない璃音は尚更だ。
確かに元通りに戻った、棗との関係以外は。Aと蜜柑の誤解が解けて以来、棗はクラスでやや孤立状態だ。
「何だよ棗さん…小泉の事、色々分かった今、まだ佐倉や白崎にあんな態度……」
「２人の事、みんなに無視しろって言った事、気にしてんのかな…」
「でも、その事はみんなも悪かったし、反省して謝ったろ？」
「いつまでも１人あんな態度でいるなんて、何か…見損なったっつーか…悲しいぜ」
以前から周りと群れるような人間ではなかったが、本当の孤立という感じではなかった。
しかし今は進んで独りでいるような気さえして、不安を感じるAは心配そうに彼を見つめていた。
「いいのかよ、白崎、佐倉」
「何で今、棗がああなんかはウチには分からんけど…いいよ、気にせんでええ」
クラスメイト達の声を聞いている間もAはずっと棗を見ていた。目が離せなかったのだ。
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
