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「先生っ」
声が聞こえる…縋りつくように、必死に僕を呼ぶ声…
先生──…
いや、これは僕ではない、誰かを呼ぶ声。
先生──…っ
必死に探し求めて、切望して。
でも、もう二度と会えない誰かを……
先生……
……ああ、これは彼らの声……あの日の記憶か…
“先生”が死んで、茜先生と柚香先輩、そして理人さんが学園を出ていってからの、あの殺伐とした日々……
心が空のまま、彷徨ってた日々───…
「櫻野、今井！」
「お前ら、また罰則くらってんのか！？
バッカじゃねえの」
下品な笑い声が聞こえて、鳴海は無意識にそちらに顔を向けた。見えたのは中等部生と初等部生。
中等部生に絡まれている２人の初等部生を鳴海は覚えていた。
「いつまでも反逆者共の事庇いだして挙句、“先生は殺された”とかバカみたいなデマ吹いてんじゃねーよ。自 殺だっつったろ」
「幹部候補生が一気に落ちぶれたな！」
箒やゴミ箱を片手に持ちながら、幼い彼らは身体を震わせながらも中等部生に突っかかる。
「先生は反逆者なんかじゃない！悪いことなんかしてない！悪い事をしようとした学園を止めようとしたんだ！」
「柚香お姉ちゃんと茜お姉ちゃんが学園を出ていく前に言ってた！だから先生は殺されたって」
「おい。こいつら、またデタラメで学園批判してるぞ。神野先生に言いつけてこい、チクリで点数稼ぐぜ」
ちょうどそこへ神野が通りかかって、幼い彼らは神野のアリスの餌食となった。
「あーあまたやってる、何度やられれば分かるんだか。子供は立ち回るってこと知らないから…こっちに火の粉降ってくる前に行きましょうよ、先輩」
鳴海の後ろから様子を眺めていた玲生は、呆れたように声を出した。自分を呼び掛ける玲生の声を耳に入れながら鳴海は思った。
「………」
茜先輩、柚香先輩。あなた達は罪作りだね。
先輩達だけじゃない。理人さん、あなたも同罪だ。
「今日も可愛いね、チビ達」
あんた達の言う事を信じて疑わない、罪もないあの子達は、あんた達が巻いた厄介事の種のせいで、今日も酷い仕打ちにあってるよ。
「ナル先輩、どーしたんすか？ジッと見て。知り合いっすか？」
キラキラとあんた達を見上げてたあの目も、今や悲しみ一色になって。
あんた達に必死に伸ばした小さい手は空を切る。
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
