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「…蛍、何かあったん？」
ベアの愛らしい姿で、だけどいつもの蜜柑の優しい声で名前を呼ばれて、蛍は思わず泣きそうになった。
そして視線を隣の兄妹に映す。Aを抱き締める璃音の表情は、やり場のない感情を我慢しているようだ。
「璃音くん…何かあった？どうしたの？」
「…っ…ふざけんな、」
「えっ、」
優しい優しい妹。そんな妹がいなくなるなんて自分には考えられない。一緒にいられるらたった一人の家族なのだから。
「大丈夫…俺が、護るから」
璃音は先ほどの月の言葉を思い出し、ギュッと掌を握り締めた。
「───もちろん、それを避ける手はあるわ。佐倉さんか白崎さん、どちらかが犠牲になればいいだけのこと。それでみんなが幸せになれる。
この先、あなた達の時間すべて。校長のために捧げる覚悟があるなら──…」
月は言った。皆を幸せにしたいのなら、この先の人生を全て初等部校長のために捧げろ、と彼女は言ったのだ。
──小泉月はこんな風に
今までずっと蜜柑とAを揺さぶり続けて
奈落の底に突き落として…
──でもその度に、2人は堪えて
笑顔で立ちなおって…………
「蜜柑、A。友情って、互いにどこか尊敬抱いてないと長続きが難しいんですって」
いつだって太陽のような笑顔を見せてくれる蜜柑。
いつだって春風のように暖かく全てを包み込んでくれるA。
そんな友達に囲まれて、蛍は何よりも感謝した。
「あたし達の絆は一生モノ。
何があっても、どれだけ離れ離れになっても…」
３人で歩ける残り少ない時間を大切にするように。今、伝えられる時に伝えられることを伝えておきたい。そう思っての言葉だった。
蜜柑が不思議に思って声を出そうとした時、蜜柑と蛍の身体に異変が起こる。
「｢“にょっ”！？｣」
「えっ、…」
にょっ、とわけの分からない音がして、バッと２人を交互に見ると頭から何かが出ていた。
そして、蜜柑と蛍はそのまま倒れてしまった。
「蜜柑っ、蛍っ！！」
「A、」
倒れた２人の元へ寄り膝を着いたAは名前を呼ばれて見上げると、璃音は真剣な顔をしていた。
「…璃音くん？」
「俺達は兄妹だから、双子だから…俺達は不思議な…透明で他の奴には見えない糸で結ばれてる」
「…う、うん……」
「だから、大丈夫…たとえ離れ離れになったとしても、絶対に大丈夫だ」
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
