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「３人揃うのは久しぶりね、佐倉さん、白崎さん。体育倉庫以来かしら」
「(…こいつ、入れ替わってること気付いてない)」
「(シャッフル事件、まだ耳に入ってないのか…)」
魂が入れ替わっていることに全く気づいていない月を僅かに哀れに思いながら璃音と蛍は黙っていた。
「体育祭では、すっかりしてやられたわね」
元凶であるだろう彼女に、このまま墓穴を掘ってもらおうと思ってのことだ。
「まさかあなたが無効化どころか、あの忌々しい盗みのアリスまで引き継いでたなんて」
璃音も蛍もずっと黙ったまま、ただ月だけを見ていた。そんな様子を見て、月は鼻で笑って見せた。
「佐倉さんに盗みのアリスが宿っているなら…
白崎さんも盗みのアリスと同様のアリスを所持していると、
璃音はピクリと肩を揺らした。月の言うあの方とはきっと初等部校長のことだろう。璃音はバレないように唇を噛み締めた。
「……否定しないのね。言い当てられて響かないとこを見ると、もう分かってはいるんでしょうけど。
一つ忠告しといてあげる。
そのアリスを得た代償は小さくはないわよ」
月は２人を視界の端に入れながら告げた。
「近々、あなた達の周りで、大事な人がいなくなる。
──たとえば…」
そうして告げられた２つの名前に、２人は驚愕して動けなくなった。蛍は璃音を、璃音は蛍を見つめたまま。
月はそんな２人を満足そうに横目で見やると早々に背を向けた。
「──やっと取り戻した、束の間の平穏な学園生活」
２人は互いから漸く目を逸らすと、遠ざかる月の背を目だけで追いかけた。
「精々今のうちに、楽しんでおくことね」
悪魔のような囁きだけが、２人の脳裏にいつまでも木霊していた。
その場に立ち尽くしたまま、何も話さなかった。身動き一つ取らぬまま、少しも動かない。
「璃音く──ん…！」
「蛍──！蛍〰︎︎〰︎︎」
やがて聞こえてきた二人の声で漸く蛍と璃音は動いた。璃音は自分の姿をしたAに駆け寄って抱き締めた。
蜜柑は蜜柑で、蛍のバカン砲の餌食と化していた。
「何でや───……」
「別に。何となく」
「別に何となくで、ウチはとばされるんかー…」
「……璃音くん？」
だが、そこは親友の立場、蛍の顔で何かがあったことを蜜柑は見抜いた。そしてAもまた、兄の異変に気づいてしまっていた。
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
