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誰もが金縛りにあったかのように動けずにいると、廊下からバタバタと走って来る音が聞こえてきた。
「鳴海先生、大変ですっ！こんなものが廊下に、」
「な？これ…｢試作品のシャッフル香｣？！」
副担任先生が持ってきたのは空き瓶だった。そこには、シャッフル香と書かれていた。
「あ…あなた、棗君ね─────っっ！いやああぁぁ、ステキィィ〰︎︎〰︎︎
その態度…そのまなざし…
ルカ君の姿をしていても、私には分かる。あなたはかの火のアリスの申し子…
ルカ君姿にその突き刺すような冷たさ、新世界〜っ！！ラブゥゥ…」
「それ以上寄ったら燃やす」
流架の表情が明らかに引いている。ああ、あれは流架の格好をしているけど、分かってしまう。あの言葉遣い。
何が彼に起こってるのか分からないけど、でも、間違いなく棗だ。
「やめて正田さん!」
流架の姿をした棗に、委員長の姿をしたスミレちゃんが飛びついていくのを呆然と見ていた時に、低くて大きな声が響いた。
「ぼ…僕の姿で、それ以上みんなの前で変な行動しないでーっっ！！」
床に手を付いたまま、小刻みに震えて涙を流す棗。その姿を見た全員に雷が撃たれたかのような衝撃が走った。
原因は分からない。けど今、分かっているのは棗の中に委員長が入ったことで元の棗と比べると、かなり人格が変わってしまったってこと。
「な…なつめ……？…何これ…」
「…大丈夫、流架。俺も混乱してる…」
目の前で涙を流す棗の姿を見て混乱している蛍とあたしの体は、呆然とそれを眺めている。
普段の姿から見ると想像もつかない棗の様子。その姿をジッと見ているあたしの体がプルプルと震え出した。
「…フッ」
「わ…笑った！Aちゃんが笑ったっ！」
「明らかに棗君を見て笑ったよ…」
「あんな棗さんを見て笑えるの、璃音君くらいじゃ…」
堪えきれてない笑みを堪えているあたし(体)の背後に、流架が現れてそのまま首に腕を回された。
「な、なつ…」
「…うっせぇ、黙れ」
「アハハハハアハハ。皆何してんの──おろしろ──い棗君きもちわる〜い！アハハアハハハ、バッカみたい」
もがけばもがくほど、流架の腕に締められてるあたし。棗、凄く怒ってる。
そして、少し離れた所でスミレちゃんは無表情で笑っていた。
「｢｢｢………。｣｣｣」
ここにも所構わずに笑う奴、いたわ。と周りの皆が黙り込んだ。
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
