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「茜先輩と柚香先輩があの日、何故あそこまでして学園を出なければいけなかったのか」


「ナル…?」





鳴海は学生時代の彼等を思い出して、懐かしげに僅かに微笑んだ。





「覚えてる?茜先輩も柚香先輩も、子供が大好きだったこと」


「お前何言って…それどころじゃ」


「しょっちゅう子供構ってはメロメロになって。ほら、あの櫻野君とか今井君の小さい頃なんか特に」





茜と柚香はよく櫻野や今井に会って構っては嬉しそうにしていたし、茜に関しては小さい頃の自分や玲生の事もとても可愛がってくれた。





「生い立ちのせいか、あのアリスに生まれて……この学園で生きる宿命のせいか」





お互いしかいなかった柚香と茜。その生い立ち故に幼い頃は人を信じられなかった茜。だけど、だからこそ彼女達は。





「いつだってあの人達は、“家族”を切望してた」





そんな彼女達が自らの子供を捨てた。





「ずっと気になってた。

“先生”を失ったショックと校長の諍いだけが、あの先輩達に愛する人との子供を捨ててまで、この先ずっと逃げ闘い続ける生き方を選ばせた理由なのか」





何故、愛する人の子供を捨ててまで、柚香は逃げないといけなかったのか。


何故、愛する子供達を捨ててまで、茜は闘い続ける道を選んだのか。


そんな生き方を選ばなければいけなったのか、その理由は何なのか。





「僕は校長が柚香先輩を恨み追い続ける理由や理人先輩を死に追い詰めた理由を彼女達が校長()の“何か”を盗み、それを取り返したいからだと思い込んでた」





だが、それは間違いだった。今回の体育祭の騒動でそれが分かった。そこでようやく気づいたのだ。





「けど校長は今回、Aちゃんの“盗みのアリス”自体に強く反応した。それで思ったんだ。真実は僕の考えてたことと、全く逆だったんじゃないかって」


「逆って…、どういう………」





岬は意味が分からなく、ただ呆然と聞いていた。冷や汗が頬を伝った。鳴海はただ真剣に告げる。





「去年、学園に柚香先輩と志貴さんが侵入した時。モニター越しの状況だったけど、はっきり志貴さんは4つ以上のアリスを戦い中、発動していた」





岬はコクリと小さく頷く。それは自分もはっきりと見た光景だったし、間違いない。そしてそれが意味する事も分かっている。





「志貴さんにしても噂で聞いた理人先輩にしても、他の人にしろ、過去4つ以上のアリスを持つ人間なんて存在した事はない」

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作者名:未来 | 作成日時:2023年11月1日 20時

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