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「わざわざお見舞い来てくれたんだ。
わー入って入って…え、」
いつまでも白を切る鳴海に半ば呆れて、岬は鳴海の服を勢いよく剥いだ。
「え…っち♡キャー…なんちゃって、」
岬は絶句した。開いた上半身の右肩に見えた黒い痣に。腕の事がバレてしまった。しかし、もう手遅れだ。
「お前…何で、何でこんなになるまで隠してた」
もう少し経てば心臓に届くだろう痣に、声が震えた。
「死ぬ気か…？」
──死ぬ。僕は死にたい訳じゃない。ただ、Aちゃんを蜜柑ちゃんを、僕の大切な生徒を守りたい。
その問いに鳴海は笑うだけだった。いつものような腹の立つ笑みでは決してなく、どこか哀しさを含む笑顔に。岬はそれを見て、さっと踵を返す。
「…今すぐ校長に掛け合ってくる」
「ちよ、無駄だって。マジかい」
「無駄かとうかは、」
「無駄だよ。校長からは既に最終宣告を受けている」
あまりにも非人道的な行為に初等部校長に文句をつけてやるつもりだった。でも、それすらも鳴海は止めた。
「どう足掻いても僕のこの腕はもう治らない…
ピタリと歩みを止めて振り返った岬に安心しつつ、鳴海は言葉を続ける。
「佐倉蜜柑は“盗みのアリス”を発現させる、白崎Aは盗みのアリスと“同様の力”があるかを調べる。
彼女達どちらかのアリスで僕の腕の
そのアリスで腕の腐食を取り除いて貰え、と。それしか助かる道はないのだと、初等部校長は自分に告げた。
それは同時に、彼女達どちらかを校長に引き渡すことに繋がる。彼女達の子供にそんな事が出来る訳ない。
「盗みアリスって…体育祭の…あの時のことか…！？」
それを聞いて、またも絶句した岬。白崎Aと佐倉蜜柑にそれらのアリスがあるのなら早く取り除いて貰えとも思ったが、鳴海は頑なにそれを拒否する。
「……僕はずっと、校長が長年“先生”の“無効化”を疎んじ、“音”を異常な程に執着し、柚香先輩と茜先輩を執拗に憎み、追うのは何故か考えてた」
脳裏には忘れる事のない光景が浮かんでいた。彼女達が涙ながらに学園を去ったあの日。
「ごめん、ナル」
「ごめんね…杏樹…ごめんね……」
彼女達が自分に泣きながら言って目の前から儚く消えていった、あの日。
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作者名：未来 | 作成日時：2023年11月1日 20時
