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殿内や近くで見ていた棗や流架、蛍も複雑そうな顔を浮かべてAへと向けている。
謝罪した翼は、抱き抱え直すと笑顔を見せた。
「でも大丈夫!何ごとも終わりよければ全てよし!だ。今日の体育祭、盛りあげて盛りあげまくって、今までの憂さ、おつりがくるくらい一気に蹴散らしていこーぜ!んで、最高の思い出にしようぜ!」」
「…うんっ!!」
翼を筆頭に盛り上がる紅組。その光景を見ていた生徒達は何やらヒソヒソと陰口を話し始める。
「ねぇ知ってる?Aちゃん達の噂」
「ああ、風紀隊に捕まったのにケロッとして戻ってきたアレ?」
「白崎って、風紀隊に色じかけしたらしいんだって」
「パンツを見せたり、胸を触らせて罰を許してもらったって…」
やっとAのエンジンがかかったのに、またもや根も葉もない噂が聞こえてきた。Aは飛び交う下品な噂話に頭を悩ませる。
「(そんな事するわけないのに…!
大体、パンツなんて何で見せようって思えるの。そんな恥ずかしい発想できるわけないのに…!!)」
後方でこちらを見ていた月を中心とする白組を横目で見やる。否定しないのは彼女がこの間、自分に告げた言葉が気がかりだからだった。
「“だまる”ことと、“でしゃばらない”こと…」
下唇をギリッと噛み、そんな噂に負けまいと笑顔を取り繕う。
「おい」
「ぅわっ」
突然、最近は話すことも近寄ることもなかった棗が背後にやって来て声をかけてきた。驚くAは肩を揺らす。
「なななななつめ…っ」
「
真っ直ぐに見つめてくる棗の赤い瞳に少したじろぐと、愕然とする内容を告げられた。
「お前、どっかの知らねー男にパンツ見せたり胸触らせたって本当か?」
「へ…」
「(え…棗?)」
「(まさか、)」
「本当かってきいてんだよ。さっさと答えろよ」
「………」
あのデタラメな噂を信じてる…?
自分の周りの人はそんな噂を信じるわけがないと、そう思っていたのに。様子を伺う流架も蛍も、思う所があるようだ。
「(よりにもよって、どうして1番信じそうにない棗が信じてるの!?)」
Aはあんぐりと口を開けた。そんなわけがないだろう
と言いたいが、後ろからの月が恐ろしい形相で見ている気配を感じて反論もできない。
「…棗には、関係ないよ…
あたしが、どこで何しようが、棗には関係ない」
代わりに出たのは、心にもない言葉だった。
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未来(プロフ) - 感想ありがとうございます!完結までまだまだ先は長いですが精進して参りますのでよろしくお願い致します。 (9月5日 19時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちゃ(プロフ) - 更新待ってました!これからも楽しみにしているので頑張ってください! (9月5日 8時) (レス) id: 7447c314b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2023年7月24日 10時