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彼女達自身、この事態をうまく受け止めきれていないのも事実だ。
何せ不測の事態だったとは言え、男子禁制のこの御殿で彼は罷り通る事を許されたのだ。異例中の異例である。
しかもその間際に仮面の君の姿を見たとなれば何かしら関わっているのかも、と予想はできる。
彼女達にもわからない花姫殿の秘密。中等部校長と彼の関係とは。
彼は花姫殿で何をしようとしている?この結界の中に、人目に触れたくないものがあるってこと…?
中等部校長の噂…
あれがもし、校長ではなく彼のものだとしたら…?
謎は深まるばかりだ。様々な疑問がAの頭を支配する。
「中等部校長ー…
では何でペルソナは結界が強く働いたその領域で、何をしてるんですか?」
蜜柑が緊張した面持ちで聞くも、静音は黙ったままだ。代わりに百合が話し始める。
しかし、適切な答えではなかった。
「言ったでしょう。私達にはそこまで分からないわ。
ただもし、日向君がその立ち入り禁止の領域に足を踏み入れてるとしたら。
そして今日の諸々の事が、どこかで仮面の君の意思と関わってる所があるのだとしたら。
今の日向君にとってあまり快適な状況が待っているとは考えにくいとは思うわ」
表情を曇らせて吐いた彼女の言葉が、Aの頭の中で木霊した。
不安を煽るようで悪いが、自分が伝えられる事は伝えてくれた。
よくない事が待っていたとしても、何も知らない不安のほうが大きいのは確かだから。
「おねがい、棗君をとめて」
「おねがい………でないと、私……」
「こっちです、」
「まさか、花姫殿にこんな抜け道があるなんて…」
「やっぱ何者、校長…こんな所にAと棗達……」
「きっと……きっと、ここに来ます。私…っ、この先の様子を見てきますから……っ、ここで待ってて下さい」
「えっ、ちょっと何ソレ?!」
「…おいっ、のばら!」
翼と璃音を残して暗い地下を進んでいると、おぞましい空気に、ひたりと足を止めるのばら。
────「…のばらちゃん☆」
背後から姿を浮かび上がけるように現れた。静かに振り向くと、彼はひっそりと薄い笑みを浮かべた。
そして、聞き慣れたもう一人の男からの厳しい目と声で射止められた体は息をすることさえ苦しい。
瞼が少しずつ下がると同時に意識が薄れていく。崩れていく体を男に預けたまま、冷たい息を吐きながら眠りに落ちた。
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作者名:未来 | 作成日時:2023年3月24日 23時