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「この少女のアリスが引き起こした火災という事ですか…」
「違います！先ほど報告した通り…」
「ですから鳴海先生、証拠もなく……学園も芹生芹生もその件については否定されてます。
町の住人達の証言から……世間やマスコミが大きく騒ぎ始めています」
「な…」
「丘の上のアリスの兄妹が火災の中、町中を走り回って騒いでただの、炎のアリスによる愉快犯だの。
学園としても、彼らをかばい続ける事はもう…」
ざわめく大人達の声。
うるさい、何も知らない奴が変なこと言うな、
お兄ちゃん……
お兄ちゃん、たすけて…
葵を、葵を1人にしないで
葵…
「……妹のせいじゃない」
そんな中で響き渡ったのは棗の酷く凛とした声だった。
「俺が、俺がやりました…俺が火をつけました」
「棗…っ」
棗は、妹を、葵ちゃんを守る為に自分で全ての罪を被る選択肢を選んだ。
流架の話を聞いたAと蜜柑と蛍。
彼女達は信じられない、と言った顔で流架を見ていた。
「じゃあやっぱり……学園のみんなが噂してた街の“火事”は棗のせいじゃなかったんや……」
「棗くんは、ただ皆を守ろうとして…妹を、葵ちゃんを守るために、嘘を……自分で全ての罪を被って……」
棗は葵を守っただけ、葵とて自ら町を燃やしたわけでは決してない。全て、企んだ学園のせいなのに。
「……棗は葵ちゃんを守ってあげれなかった自分を許せなかったんだと思う。だから、たとえ火事の裏にどんな理由が隠されていようと、こうなったのは自分のせいだっていう気持ちが消えなくて、だから……」
あの日も……
「君のお父さんは火事の中、妹さんを助けようと丘まで戻られて、ケガをなさって今、同じ病院に入院なされている。大事には至っていないので安心して欲しい」
あの後、棗のお父さんが運ばれたという病室を訪ねた。包帯で巻かれた体は痛々しくて、苦しそうに目を閉じている寝たきりのお父さんを棗は見つめる。
「………お父さんとの面会だけど、これが最後と思って欲しい」
「な…」
鳴海の言葉に驚いた。
「君が自ら放火犯だと自供した件について、国と学園が話し合った結果、君がおこしたと思われている諸々の罪は、アリスのコントロールや性格などの不安定さが原因だという見解から、君の８歳という年齢も考慮されて、世間には不幸な事故という形で、この件は収められる事になった」
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作者名：未来 | 作成日時：2023年3月24日 23時
