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お兄ちゃん…


お兄ちゃん、たすけて……


葵を1人にしないで……こわい…






「棗…っ!」



「行くんだ、はやく!!」





棗の選んだ選択肢は、葵ちゃんの炎を消しに町へ降りること。





炎を…葵ちゃんのアリスを…


これ以上誰かが傷つく前に


はやく止めなきゃ……っ!!






「芹生先生、あんたは……」





ぐっと眉根を寄せる鳴海はひっそりと薄い笑みを浮かべたペルソナに声をかけた。





「…校長からの指示です」


「な…っ」





校長…っ




「彼を…日向兄妹を校長の希望通り、危険能力系として学園を迎え、働いてもらうには、それに反対する他者を納得させる説得材料として、彼のより詳しく能力データが必要なんです」





誤魔化そうという気は更々ないペルソナは続ける。





「そのため、校長から増幅石(ストーン)を…まさか妹の方がアレを使ってしまうとは計算外でしたが」


「それも予想の範囲内だったはずだ」





こいつ…よくもしらじらと………





見え透いた事を述べるペルソナに瞬きのない真っ直ぐな目で睨みつけた。




「…石を使ったのが()の方ならば、その能力の高さから暴走したといえど、自ら炎を収拾するだけの力があるだろうと踏んでいたのですが。

正直、妹の方にここまでやれる力があったとは、予想の範囲外でしたよ。思ったより事後処理は大変に…」





言い終わる前に顔面に鋭い衝撃が走り、視界がぐらりと揺れた。制御仮面が落ちた音を聞き、右頬を殴られたのだと理解した。





「鳴海先生、手...っ」





彼の身体に触れれば、忽ち触れた者の体を蝕む黒い染みが浮かび上がってしまう。2人の様子を見ていた槙原は車内から鳴海を呼びかけた。


仮面が外れて隠されていたその切れ長の鋭い目は、鳴海を厳しく射止めていた。





───暗い、闇色の瞳………





「……あなたのようなどっちつかずの、所詮日の当たる場所のぬるま湯程度の闇しか知らないくせに不幸に酔いたがる。

そういうバカな人間が、私は一番虫唾が走る………」





殴った右手を横目に、落とした仮面を拾って片手に持つペルソナは鳴海の方へ振り返った。





「……そんな手、腐りおとしてやったっていいとこですが、許してあげますよ今回は。これくらいは予想の範囲内でしたから……では」





そう冷たく言って、ペルソナは火が回っていない森へと入っていった。





…2人共、間に合って……っ!

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作者名:未来 | 作成日時:2023年3月24日 23時

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