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「ぼっちゃん方、すみませ…ゲボッ、逃げるのに精一杯で…」
昼間よりもその頬は赤く、意識も薄れてきているように見える葵。
どうして…
「あっという間に謎の発火が発生して…
どう消そうとしても消えるどころか、異常な燃え広がり方を…………」
この火…アリスの炎…っ!
家を覆い尽くす炎はただの炎じゃない、アリスの炎だと気付いた棗。
「お兄ちゃ…お兄ちゃ…どこ…こわい………」
抱えられた葵の手が茂っている草に触れてしまい、野原に火が広がっていく。
「棗、はやくにげなきゃ!!」
これは…葵の
「火が…すごい勢いで広がっていく…っ!」
暴走した葵のアリスは家だけでなく、勢いのままに辺りの木々にも移って、丘が炎に包まれていく。
何で…葵の体に何が…っ!?
「はやくにげなさい!!」
「お前…」
あの時の教師…っ
突然響いた、新たな人物の声に棗と流架は驚いた。息を切らせた鳴海がやってきた。流架のスカウトでこの町に滞在していたのだ。
「遅かった…」
「“遅かった”って…お前ら、何か知って…」
葵の様子を見てそう呟いた鳴海。鳴海は食い付いてくる棗の腕を掴んできた。
「彼女をこっちに、はやく!」
「葵にさわるなっ!!お前ら、葵に何を…」
「今ここで争ってるヒマはない!……話をきくんだ」
鳴海の言葉に、棗は押し黙る。言いたい事は山ほどあるけれど、今は炎を止めることが先決だ。
「君らは今すぐここを出て、町へ降りて火事の事を町の人達に知らせ、皆を避難させるんだ」
「な…」
「
彼女のアリスは暴走し続け、普通の消火作業では、そうそう消せないこの火が町に広がるのは、もう時間の問題だ」
鳴海の話に背筋がゾクリとするのを感じた。額には冷や汗も浮かんでいる。それは棗だけでなく、流架も同じであった。
「同じ炎のアリスとはいえ、自分から発生したわけじゃ
ない暴走
これ以上炎が広がればより収拾はつかず、とりかえしのつかない惨事になる。
今…こうなった事の経緯を話しているヒマはない。
だけど必ず、彼女が正常に戻るよう、僕らが最善の努力をする」
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作者名:未来 | 作成日時:2023年3月24日 23時