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「よかったねルーちゃん。
お母さんのOKもらえて!」
「うん。てっきりモーレツに怒られるかと…」
「ごめんなルカ君。ウチ布団3組しかなくて…
しかも寝室1つで」
「そんなこと…楽しいです」
本を読む棗と同じ布団に入っている流架は、嬉しそうに笑っている。葵は父親の隣ですでに眠っている。
「おじさん…画家さんですか?お仕事…」
「え?分かる?画家オーラまとってる?」
「びんぼー画家オーラな」
「いや、絵がいっぱいあるので…」
流架が言った通り、寝室の壁には沢山の絵画が飾られていた。
「あの絵…」
流架の目がふと、1枚の絵に向けられた。切れ長の紅い瞳と漆黒の髪、綺麗な女の人の絵だ。
「ああ、それは僕の奥さん。棗達のお母さんだよ」
棗のお母さん…わ…キレ─…
棗にそっくりだ。
「棗に似てるだろう?性格も似てるんだよ、コレが…
棗達が小さい時に、事故で…亡くなってね。
彼女はアリス学園のマドンナで、僕は冴えない一生徒。ある日、彼女にバスでチカンから救ってもらって、そこから2人の交際が…あれ?聞いてない…」
棗のお母さん
事故で亡くなったんだ………
「本当は事故がどうか分かんねーけどな」
「え…」
「親父と母さんは、アリス学園の体制を批判する活動を
してたんだ。そのいざこざの中で事故だったんだろう?親父」
「棗…」
おねがいよ、あなた…
ともすれば危険ともとらえる炎のアリスと
学園にとって
危険思想にある親をもつと見なされたこの子達が
学園につれていかれたら
どんな運命がまっているか…
おねがい、あなた。
この子達を守りぬいて…………
おねがい…………
「やめようかこんな話、ハハ…ほら、ねよう!
夜更かしは美容に悪いからねルカ君!今夜は星がキレイだから、明日はきっといい天気だな………」
──少しでも長く
一緒の時間を過ごせたらいいね…
ねえ、棗。
俺はこの時、心からそう思ったんだよ。
棗の家に泊まった次の日。流架は自分のルカ日記にこう記した。
『泊まった事を棗と2人であやまった。
ついでにおねがい事をしてみた。だめもと』
母親は勝手に棗の家に泊まった事も怒らずに許し、棗を咎めることもしなかった。
「……イイワ。
車デノ送り迎えハ、モウヤメマショウ。車ジャア確かにお友達と道草の1つも出来ないモノネ」
「「おくさま、いけませんて!」」
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作者名:未来 | 作成日時:2023年3月24日 23時