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「それを聞きにきたんだろ」


「…何でを分かったの」


「何でって…」





顔に書いてある、とは言わずに続ける棗。




「今の本当!?お兄ちゃん」


「特にまだ何かあったわけでもないのに、これくらいの事でいちいち逃げてたら、キリねーだろ」





よかった…


僕の心を読んだかのように、そう言った棗。
心から良かったと思ってしまった。


嬉しさを表情として出すのは久しぶりの事だった。





「何だよ、1人ぼっちになるとでも思ったのか。
そのかお…」





安心したように嬉しそうな顔をしている僕を見て、そう言った棗は確かに笑っていた。






あと少し長く、


棗と一緒にいられるんだ…………


それだけで心が温かくなった。


よかった……


僕はこの時、心からそう思ったんだよ。





「友達なんてそんなもん、つくったて仕方ねーだろ」





棗の父親曰く、今まで笑ったりだとかはしない子だったらしい棗が今、“友達”と一緒に笑っている。





「ルカくん。
今日はもう遅いから、泊まっていったらどうだい?」





そんな棗の様子を見て気を遣ったのか、棗の父親がそう言った。





「君のお母さんには僕の方から伺いを立てるから。
今日は棗といろいろまだ話したい事もあるだろう?」


「え…でも、マ…母は…」


「大丈夫。ちゃんと話せば君のお母さんはきっと許してくれるよ」





電話の使い方がわからない棗の父親は、葵に聞きながらボタンを押して流架の母親に電話をかけた。





いつまでも続くわけじゃないこの時を


せめて少しだけでも一緒に……





「何だろうこれ…キレイな赤い石…」





窓の縁に不自然に置かれた深い紅蓮の色をした石。
確かにとても綺麗な石である。


葵は棗の瞳のように深い紅蓮色の石を宝物にしようと、にこにこと笑いながら握り締めた。


とてつもない力を持っているその石が仕組まれた物だと知らずに…





「…あれ?今日は最後の交渉とか言ってませんでしたっけ。早いですね、戻ってくるの」


「来客中のようだったので、後日また様子を見に……」





車内喫煙は禁止のため外で吸っていた槙原は車に戻ってきたペルソナに声をかけると、彼は季節外れの厚手の手袋を外しながら答えた。





「(手袋…?)」


「鳴海先生?どうかしました?」





何だ…?今の笑い……





この町に来るまで持っていた赤い石はどうしたのか。石と不敵な笑み。鳴海は不審に思って眉間に皺を寄せた。

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作者名:未来 | 作成日時:2023年3月24日 23時

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