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「お兄ちゃん。今日の事で、町中に私達がアリスだってバレたら、また前みたくこの町をひっこす事になっちゃうの…?」





野生のリスを撫でながら悲しげに紡ぐ葵の言葉に、流架は困惑した。





「折角、ルーちゃんと仲良くなれたのに………」


「……しょーがねぇだろ…」





無言の末、棗はただそれしか言えなかった。


夕方になり、流架を一人で帰らすことは危ないと思った
2人は流架を乃木家まで送ることにした。





「ルーちゃんっ!
アナタ、皆をドレダケ心配させたと思テルノ!?」





家に着いた所、門前で涙を流しながら怒鳴る流架の母が待っていた。





「じゃ…俺達はこれで」





流架は母親からお仕置きを喰らっており、棗と葵は火の粉が自分達に向かない内に、と足早にその場を去った。





「すげーな、あのかーちゃん…」


「うん…」





金髪美女の母親で、あの過保護さとご立腹さ。あまりのインパクトの強さに帰り道、流架の母親について棗と葵が話したのは言うまでもない。





「最近、ルーちゃんがチョイ悪なのは、あの子達ノせいナノ!?学校カラモ連絡あったケド…」





いつの間にか遠くの方にまで行ってしまっていた棗と葵の姿が見えた。





「ちが…棗のせいじゃない!僕の友達を悪くいうな!」


「こら、ぼっちゃん!
おくさまに何ていう口のきき方を!」





“友達”…



棗は僕の、はじめて分かりあえた友達…





「…、ごめんなさ……」





流架はボソッと言い捨て走り去った。





「…ルーちゃん、あの子があんな強イ目デ、誰かの事ヲ話スノ、初メテ……」





一緒にいて


はじめて孤独を忘れた。





家を飛び出した流架は、ただただ暗くなる夜道を走る。





多分もうすぐ


棗とは、はなればなれになって


僕達が一緒にいた時間は人生のほんの少しになって


なのに、こんなに


今もこの先も、棗がかけがえのない存在に思えるのは


棗との時間が1番大切に思えるのは


何で…





「……何事?」





僕は気付くと棗の家まで来ていた。棗は驚いていた。


棗は僕と、僕についてきた2人のボディーガードを家に入れてくれた。





「(つい、いきおいで、きちゃったけど…
棗は…本当に引越しちゃうのかなあ、)」





いつ……





棗の父から与えられたホットミルクを両手で持って、ずっと黙っている流架。


そんな流架の考えを察してか、棗がふと呟いた。





「…引っ越しはねーよ、まだ」


「え」

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作者名:未来 | 作成日時:2023年3月24日 23時

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