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「ルカ、おいルカ。もういいって。
どこまで逃げるんだよ」





流架は棗達の手を引いて、学校付近の森の深くまで逃げ込んだ。棗が何を言っても流架からの返事はない。





「いーんだよ、もう。学園に見つかった時点で、遅かれ早かれ、俺達がアリスってことはもうバレるんだ。それよりお前、学校でたりしてまた変な奴に狙われるぞ」



「…この森には、滅多に人が入ってこないから大丈夫」



「え」





流架は暫く黙った後、やがて静かに口を開いた。





「…ここ、熊がたくさん出るから…有名なんだ」





その言葉と同時に横の茂みから1匹の熊が襲いかかってくる。一瞬、動きが止まった。





「お…お兄ちゃん……っ」





葵の焦りの声で呼ばれた棗は、咄嗟に炎を手に出した。





「だめだよ、「ハチミツ」っ!」





熊に向かって呼びかける流架。そしてキラキラ度が三割増しした流架は熊に飛びついていった。





「何でお前はいっつもそーやって、人を驚かそうとするんだよ、このいたずらっ子!!2人は僕の友達なんだよ〜☆♡」





言葉を失った。熊と幸せそうにイチャつく流架を初めて見た時は言葉を失った。





「あ…あきれた?僕のアリス…」


「……や…」


「ルーちゃん、おもしろーい」





恥ずかしさと情けなさが入り交じっている流架は、熊に寄りかかりながら顔を俯けた。


それに棗は首を振ったが、目をキラキラとさせて大声で言い切った葵。すぐに棗の拳骨が直撃した。今のは面白がった葵が悪い。





「……いいんだ、棗達のアリスとは大違いだろ」





棗達と比べて、自己嫌悪して落ち込む流架。動物フェロモンのアリスが本当にコンプレックスなのだ。





「恥ずかしがることねーだろ。
いいじゃん、お前のアリス」


「え…」



「俺達のアリスは確かに役立つ事も多いし、誰かを守る力にもなるけど。でも反面、誰かを傷つける」





棗は穏やかな目で流架に語りかけた。





「だけどお前のアリスは、誰も傷つけず逆に通じ合って今、俺達2人を守った。
すごく強くてやさしいアリスじゃん」





傷つけることでしか守れない


俺のアリスなんかより──…





「ルカらしくてうらやましい、いいアリスだな」





──はじめて


僕のアリスのこと…


はじめてあんな風に言われた…





また呆れられる、そう思ってたのに。
棗は予想もしていなかった言葉をくれた。


本当に嬉しかったんだ。
棗は、僕の中でとっても大きな存在になった。

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作者名:未来 | 作成日時:2023年3月24日 23時

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