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自分にできる事を必死に考えて苦しみ、今も苦しみながら下した決断。
「棗は…」
本当に棗のことを大切に思っているからこそ、戦おうとしている。棗を助けたい気持ちは、人一倍強いのだ。
「棗はAに…A達に出会うまで、生きる希望を見失いかけていた」
“人殺し”
──Aのように
棗のために、今の俺に出来る事…
「…でも、今は違う。今の棗は何もかもあきらめかけたあの頃とは、もう違う」
Aのように、力を合わせて
一緒に進んでくれる仲間がいるってこと
棗は、一人じゃないってこと
「…棗は、お前らや…みんなが言うような、大罪人や人殺しなんかじゃ決してない!」
ちゃんと伝えたい。
「この先の棗の未来、絶対、こんな
この終わりのない暗闇から
もう、棗を解放してあげたい…っ
「……」
そして、言い切った流架は翼の着物をぎゅっと掴んだ。真剣な眼差しのまま、A達の方へ振り返る。
「A、璃音、佐倉、今井。棗の所へ行って。
ここが終わったら、必ず後から行くから」
ここで一度もみんなを守れない俺が今行っても
棗の助けになるのは思えないから。
だから…
「…ダメ、」
伝わったよ。伝わった、流架の優しい思いも気持ちも、言葉も、ちゃんとあたし達に伝わったよ。
「…流架っ、」
涙を流してこんな事を言っても、説得力も何もないかもしれない。それでも流さずにはいられない。
「…せめて3人は先に、」
溢れ出る流架の棗くんへの思い。流架がどれだけ棗くんを思っているか伝わってきた。だからこそ…
「だからこそ、流架が行かなきゃいけないんだよ!!」
ずっとずっと、見てきたから分かるよ。
どれだけ棗くんが流架を大切に思っているか、どれだけ流架を信頼しているか。
「今、棗くんに1番必要なのはあたし達じゃない!流架だよ?1番側で棗くんを支えてきて、誰よりも棗くんの事を知ってるのは流架じゃん!」
今の棗くんも、棗くんの本当の過去を知ってるのも流架だけなんだよ。
苦しみも悲しみも喜びも一緒に味わってきた、どんな時でも変わらずに棗くんの隣にいた流架が、側にいないでどうするの。
「今、棗くんの側に流架が行かないで誰が行くの!流架が残るくらいなら、あたしが残る」
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作者名:未来 | 作成日時:2023年3月24日 23時