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蛍の言葉に、Aは今だ床に座っている陽一に肩を貸して支えながら立ち上がった。
「蜜柑、今から死ぬ気で無効化に集中して。くるわよ」
「は…はい、！」
「よーちゃん、あともう一息がんばって」
「う！」
「そこのカゲおきろ。働け」
「え、あ…はい、」
戦闘体勢を整えるべく、一人一人に声をかけて鼓舞していく蛍。おまけに翼にだけ、少しキツい言葉とバカン砲の砲口を向けた。
「A、あの呪いを止められそうならやってみて」
「わ、分かったっ」
「全員のサポートは、俺がする」
気弱な気持ちを湧くな。結界の跳ね返りを気にするな。自分にできる事をしろ。皆を守りたいという気持ちを、言葉に、音に出せ。
「ルカぴょん。行くわよ、棗君のところへ」
最後に、凛とした声で告げられた流架は目を見開いた。
普段、蜜柑や翼が流架を呼ぶ時みたいに、あるいは、心読み君達が揶揄う時のように呼んだ。
「流架、棗くんを助けに行こうっ」
Aは蛍に続いて流架の前に出て手を差し出す。金髪がさらりと揺れる。流架は、薄く空いた口を閉じて顔を俯かせる。
「───棗…
早く大人になって、力が欲しい。
そして、いつか───…
いつか……」
棗…っ
数秒ばかりそうして顔を上げる。迷いなく決意した流架は一歩前へ歩み出して行く。
「…流架？」
どこか今までとは少し違う彼の雰囲気を感じとるA達。
「この…」
瑠衣は怒りを露わにし、反撃に出ようと立ち上がろうとした。しかし、後ろから何かの群れが集まってきていることに気付く。
「え…」
「わっ、何だ…！？ネズミ！？」
大量の鼠が瑠衣と颯を取り囲む。それが流架のアリスによるものだと分かるのに時間はかからず、Aは思わず彼を見た。
「…争い事で動物達に協力してもらうなんてどうしてもやりたくなかったけど」
流架の声は徐々に大きくなっていき、流架の意志が伝わってくる。数え切れないほどの鼠を引き連れた流架は、続けた。
「でも今回だけは……
これ以上、みんなが傷つくのを少しでも防ぎたいから。棗を絶対に、ここから連れ出したいから……」
これ以上、棗を
１人で暗闇の中に立たせるのは
もう、終わりにしたい。
流架のした決意。動物を心から愛し、動物が傷つく事を何より嫌う彼は、動物を巻き込んででもアリスを使うと決断した。
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作者名：未来 | 作成日時：2023年3月24日 23時
