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大きなハンマーをどこからか取り出した棗くんの脅しのせいで、何も話せなくなってしまった。
何も話せない分、頭の中は棗くんの事でいっぱいだからなかなか眠りにつけなかった。棗くんはもう寝ちゃったみたいだけど。
───お兄ちゃん…っ、あつい…
「……っ、」
「…?、棗くん…?」
花園会行けるのかなあ…なんて考えていたら、棗くんが少しだけ声を漏らした。
凄く苦しそうな声。もしかして、うなされてる?
「……ん…っ、はあ…」
「棗くん!棗くん!大丈夫?」
苦しそうに顔を歪めた棗くん。気づいたら起き上がって顔を覗き込んでいた。
「……」
「…な、棗くんっ、」
パチリと開いた目。
棗くんの瞳とあたしの瞳が混じり合った。
「…へっ、」
急に伸びてきた手に体ごと引っ張られて、あたしはそのまま棗くんの腕の中に。
「…な、棗くんっ、」
「うるせ…じっとしてろ、」
首筋にかかる棗くんの息に肩が反応してしまう。
こんなに近くに棗くんがいるのに、あたしには棗くんを救えないの?
「…お前なんか…明日が終われば、すぐルカに返してやる…だまってろ…」
そう言って棗くんは眠りについた。こんなに、こんなに近かったらあたしの心臓の音、棗くんに伝わってしまうんじゃないか。
「…棗くん、あたしは、棗くんの側にいるからっ、」
棗くんの体をギュッと抱き締め返した。
「…大丈夫だよ、大丈夫、棗くん…棗くんは1人じゃないから、」
そっと呟くように、自分に言い聞かせるように呟くと、そのままあたしは深い眠りについた。
「…A、」
棗くんの声が聞こえた気がした。優しくて温かくて心地いい声が聞こえた気がした。その声はあたしを包んだ、そんな気がした。
棗くん、夢を見たの。棗くんと流架とあたしの知らない女の子が笑い合っている夢。
凄く幸せそうな棗くんの笑顔がそこにはあったんだ。
あお、い……
棗くん。その女の子の瞳ね、棗くんと同じ色をしていたんだよ。
「本当は、棗君の手、Aとくっついてないんじゃないかって思ってるんじゃないの?」
「…っ、(お…きてる?!)」
「
「そんなの…、」
「その理由が知りたいから、こんな状況でも黙って大人しくなすがままになってるの?」
「おれは……っ、」
「ぐ───…」
「…え、まさか…寝言?」
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未来(プロフ) - てあさん» 嬉しいお言葉、ご愛読いただきありがとうございます。 (2023年3月24日 22時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
てあ(プロフ) - すごく面白くて大好きです。 (2023年3月24日 3時) (レス) @page50 id: 0608e9eaca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2023年1月11日 19時