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棗…
人と違う立場であるという事を
忘れたその先にある未来に
脳裏に、いつの日か言われた言葉が蘇る。
思い出したくもない声が聞こえた気がした。笑顔で俺に手を伸ばしたAの顔が歪んだ。
あいつは、苦しそうに蹲った。
何が待ちうけているか、
それは分かってるはずだろう…
知らず知らずのうちに険しくなる自分の顔。
“棗くんっ!”
会いたい。笑顔がみたい。安心したい。
「大丈夫だよ、」
そう言って欲しかった。
───俺の大好きな、あの笑顔で。
「…あっ、あ、な、棗くん!」
「…何か用かよ、巨乳」
「な…っ、へ、変な事言わないでよ!
……あっ、違くて…あの、その…」
「…早くしろ」
「…棗くんの、お母さんの名前、教えてくれない…?」
「………馨……五十嵐馨…」
「!!っ…な、棗くん!あのねっ!…きっと、きっと、あたし達が出逢うのは必然だったんだよ!」
そう言って笑ったAを気がついたら抱き締めていた。
勝手に身体が動いていた。愛おしい、と心から思った。
体質系クラスでは掃除が終わり、生徒達も疎らになっている頃。
「……っ」
右手から激痛が走って手袋を外す。すると、黒の染みは前よりも酷くなっており広がっている。
「鳴海先生──」
寮に帰ろうとしていたスミレは、少し険しい顔で自分の手を見つめていた鳴海に声をかける。
「ルカ君知りませんかー?どこ探してもいないんですー
一緒に帰ろっていったのに〜」
「ああ、どっか別のクラスのお友達の所に、お手伝いにでも行ってるんじゃないのかな」
キョロキョロと周りを見て流架を探しているスミレに、鳴海はいつものお得意の笑顔で切り返してきた。
「あ──、棗君のとこかしら?もしかして。
それは仕方ないわね…」
そう言うスミレは少ししゅんとして、さよなら〜と挨拶して、帰っていった。
「…………、B組に戻らなちゃ」
彼女を見送ると右手首を抑えながら向かった。
翼に手を引かれて辿り着いた先は、特別能力系のクラスだった。
優雅に寛いでグラスでジュースか何かを飲んでいる殿内に呼ばれたAは隣にチョコンと座った。
一緒に来た蛍はソファに寝っ転がって雑誌を見ている。せっせと荷物を片付ける蜜柑を見て、Aも床を拭き始めた。
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未来(プロフ) - てあさん» 嬉しいお言葉、ご愛読いただきありがとうございます。 (2023年3月24日 22時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
てあ(プロフ) - すごく面白くて大好きです。 (2023年3月24日 3時) (レス) @page50 id: 0608e9eaca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2023年1月11日 19時