039 ページ43
能力別クラスの教室に行こうとしたら、蜜柑がいなかった。
クラスの子に聞いたらついさっき思い詰めた表情で先に行ってまったらしくて、今から走って行ったら間に合うかもと思い、駆け出した。
「あっ！いた、蜜柑っ」
「…っ？！Aっ。ごめんな、ウチ先行ってもうた」
後ろ姿からでも分かる程、思い悩んでた。一人トボトボ歩く蜜柑を見つけたあたしは呼びかけた。
振り向いた蜜柑に向かって小走りして隣に並んで歩きだそうとした時だった。
「お前、まじで元気だなー。
警備員の目を掻い潜って入って来たんだ？」
目の前の草陰に子犬と戯れる璃音くん。
そして、棗くんの姿が見えた。
「あ……」
「璃音...と棗っ！？
(い…いやな奴遭遇っっ！！)」
目が合ってしまった。こういう場合ってどうすれば良いんだろう。見なかった振りして逃げるとかかな。
「あれ、Aと蜜柑じゃん！
今から授業とか大変だな、俺達見ての通りサボリ〜！」
璃音くんはそう言って笑っていた。
“危険能力系”
初めてそれを聞いた時に棗くんや璃音くんが危険能力系だった事を委員長が教えてくれた。
「…サボったら、怒られたりしない？」
文化祭に参加出来ない事がどれだけ辛いか、寂しいか、あたしには分からない。けど璃音くんはいつも笑うの。
「怒る…？んなことされねーよ！な、棗？」
「…知らねー」
多分、多分だけど、璃音くんも棗くんと同じくらい辛い思いをしているんだと思う。それでも彼は笑ってる。
「…璃音くんは………っ」
──────どうして、辛いのに笑えるの？
そう聞こうとしたけど、聞けなかった。
蜜柑が棗くんを終始睨んでいると、睨み返されて持っていたチラシを全て落としてしまう。
地に散らばったチラシは全て文化祭についてのもので。それを蜜柑と一緒に拾うと棗くんがチラシを１枚拾う。
それを見る瞳には悲しみの色があった。
「どいつもこいつも“文化祭、文化祭”…
…何が楽しいんだか。文化祭なんて銘うってるだけで、
あんなの只の“アリス品評会”じゃねーか。くだらねえ」
何処か遠くを見ながら、そう言ったのが聞こえた。
棗くんには頑張る場所がなくて…
だから今日あんなに機嫌悪くなって…
「…Aっ。ウチ、先行くねっ！」
「え、あ…うん。後、でね、」
静かな空気が流れて居ずらくなったのか、蜜柑は重い足どりで特力の教室へと向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 197人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
未来(プロフ) - 唐瓜さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！私事ですが、更新が不定期になります。申し訳なく無いですが、これからもどうぞよろしくお願い致します。応援の言葉を糧に頑張ってまいります！ (2020年6月6日 13時) (
レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
唐瓜(プロフ) - 面白くて大好きになりました！！これからも応援しています (2020年5月27日 23時) (レス) id: 3816d577a0 (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - はるかさん» 楽しんでいただけているようで嬉しいです。これからも何卒、気長にお付き合いください^ ^ (2020年5月6日 14時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 話読むごとに学園アリスのストーリー思い出して楽しませてもらいました…！ (2020年5月6日 1時) (レス) id: 711d6ac2b7 (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - はるかさん» 応援ありがとうございます！これからどんどん更新していくので宜しくお願い致します。 (2020年4月24日 14時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未来 | 作成日時：2020年4月24日 1時
