番外編46話 キロランケの葛藤（3） ページ33
松崎に説得を試みるも全く聞こうとしない。
A『裏切り者・・・なん、で！！』
俺のことを信頼してくれていたのだろう。
その顔は酷く悲し気だ。
その質問には答えずに、「手当しなければ死ぬぞ」と再び説得をしてみる。
が、松崎は既に俺を敵とみなしていた。
A『俺にとってお前はもう・・・敵だ』
松崎はそう言うと、何の躊躇いもなく銃剣を引き抜いた。
俺がこのあと何をしようとしているのか気づいているのか。
俺をここで仕留めようとしている。
・・・・殺られる。
もしかしたら引き分けで終わるかもしれない。
松崎にも予め話しておくべきだったか。
俺は身構えた。
が、直後、松崎の動きが止まった。
アンケシ「A・・・・・！！』
アンケシが、松崎の、名前を呼んだからだ。
A『え？・・・アンケシ、さん？』
松崎は俺から目をそらし、アンケシを見つめた。
あっという間に油断と隙が生まれた。
アンケシ「よかった！キロランケニｼパと合流できたか・・・」
キロランケ「ッ！」
アンケシに、俺の姿を見られた。
この状況を見られるのはマズイ。
アンケシは松崎がボロボロだと言うことに気づいていない。
・・・頼む、こっちに近づいてこないでくれ。
願っても、無駄だった。
アンケシはイソンノアシの遺体に躓き、転んで後ろを振り返った。
照明弾が打ち上がった。
そして、アンケシの表情は凍りついた。
松崎は、どう声をかけるべきか、戸惑った。
・・・・・アンケシを、使おう。
松崎を、大人しくさせるのには、アンケシが一番都合が良い。
最悪、死んだとしても、そうだ。
アンケシが居るじゃないか。
残り一つしかない爆弾を取り出す。
これを、アンケシに向けて投げれば・・・。
松崎は自滅してくれる。
キロランケ「・・・松崎。悪いな」
栓を抜く音に気が付き松崎がこちらを振り返った。
俺はアンケシに向けて爆弾を投げた。
呆然と立ち尽くすアンケシに覆いかぶさるように松崎はいった。
右足も身体の痛みに耐えて、相棒を守った。
轟音が響く。
松崎の左半身は数秒炎に包まれていた。
火が消えて、松崎の左顔のこめかみ付近から首筋にかけて肌が爛れ、焦げ臭い匂いがした。
かろうじて、松崎は息をしていた。
松崎は、俺を睨みつけ呟いた。
A『俺から・・・逃げ切れる――・・・と、思うな、よ』
真っ直ぐに俺を見上げる眼光が、鋭く光る。
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作者名：白文鳥 | 作成日時：2020年12月13日 12時
