番外編41話 家族（2） ページ22
寿三「これから東京に行くんだ。お前は？」
雪菜「わしもやわあ。ちいと観光しとうて」
寿三「・・・・一緒に行くか？」
雪菜「東京には詳しゅうて？」
寿三「私は近衛師団の少尉を努めている」
「だから何度も行ったことがあるしそこらへんの者よりは詳しいと思うぞ」
女性は少し悩んでから頷いた。
雪菜「それじゃあ。御一緒してもろうても良いか？」
ーー
女の名前は【
雪菜「豪雪ん後に一輪だけ花が残っちょったんや」
「そげな力強さぅもっちほしゅうてお父様がつけちくださった」
「雪に菜ん花ん菜。変わった組み合わせやろう？」
寿三「まぁな」
雪菜は楽しそうに微笑む。
雪菜「寿三様ん漢字はどう書くんか」
寿三「長生きのトシに――」
雪菜「？？」
いかにも理解できていない表情を向けてきたので私はもっと分かりやすいほうで伝える。
寿三「ことぶき・・・こっちのトシだ」
雪菜「祝い事んじゃなあ。めでてえやつ」
私は頷いた。
寿三「あとは漢数字の三だ」
雪菜「新選組ん土方さんと名前は一緒なんじゃなあぇ」
雪菜はうんうんと頷くと「カッコイイ立派な名前じゃなあ」と頷いた。
それから、私と雪菜は東京を観光した。
竹本にはあとでたっぷり叱られようと彼女との時間を満喫した。
雪菜は最初よりも私に心を許すようになっていた。
その日以降も会う約束をして、私と雪菜は沢山いろんな場所を訪れた。
月日が経過するにつれて雪菜は標準語を話すようになった。
私は雪菜のお陰で大分弁を覚えてしまった。
寿三「雪菜。私と結婚してくれないか？」
「幸せにするとは言えないが・・・大事にする」
雪菜「寿三様。そこはすらごとでも決り文句ぅ言わな」
雪菜はそう言うと、私の目の前で初めて涙を流した。
雪菜「私なんかで良いですか？」
私は頷いた。
寿三「雪菜やけん良いんや」
雪菜は「喜んで」と笑うと私に抱きついた。
私も雪菜を抱きしめた。
街中でひと目も気にせず私達は接吻した。
ーー
雪菜「ゴホッ・・・ゴホッ ゲホッ」
寿三「また咳か？」
雪菜「肺炎を患ってますから・・・耳障りですか？」
寿三「いや・・・・大丈夫か？」
雪菜は頷いてみせるが激しくせきこむ。
寿三「医者がいってた。子供は諦めろって」
雪菜「・・・・・・うみます」
「産ませてください」
雪菜が膨らんだ腹に手をおいた。
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作者名：白文鳥 | 作成日時：2020年12月13日 12時
