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33話 遠吠え(3) ページ7

ASide
夜。昼間ので遊び疲れたのかアンケシさんもアシリパもいつもより早く眠りについた。

俺と杉元は眠らずにボンヤリと時間が過ぎるのを待っていた。

その時だ。

マカナックル「聴こえるか?杉元さん。A。珍しい音だぞ」

ボンヤリと座る俺達にマカナックルさんが話しかけてきた。

よく耳を澄ますと獣の遠吠えが耳に響いた。

マカナックル「犬よりも太くて長く続く遠吠え。狼のものだ」

杉元が顎に手をやり呟いた。

杉元「大きな白い狼がアシリパさんを守るのを二度見た。どういう関係なんだ?」

A『・・・アンケシさんにも懐いている様にも見えたが』

マカナックルさんが煙草を咥えながらポツリと言った。

マカナックル「そうか・・・やはりあの遠吠えはレタラだったか」

マカナックルさんが静かに続けた。

マカナックル「あの狼はアシリパとその父親が山へ狩りに行った時ヒグマに襲われているのを見つけて拾ってきた」

  「アンケシとその父親も面倒を見てやっていたんだ。小さい雪だるまのようだったから【白い】という意味でレタラと名付けた」

マカナックルさんがシロに手を伸ばす。

シロは俺の懐に逃げ込んだ。

マカナックルさんが寂しそうに微笑んだ。

マカナックル「いつも一緒だった。丁度、Aとそのカララクカムイ(ハシボソガラス)の様に」

  「父親が殺されたあともアシリパはレタラとふたりきりで山へ行った。だがふたりは生きる世界が違ったのだ」

  「その日も今夜のような遠吠えが風に乗ってアシリパたちに届いた」


マカナックルさんがアシリパとレタラの話を聞かせてくれた。


ある日、アンケシさんがひとりで山に行ってしまったのでアシリパとレタラは仕方なくふたりで狩りに出掛けたそうだ。

その時、ふたりの基に狼の遠吠えが風に乗って聴こえてきたそうだ。

レタラはその声を聞くと止めるアシリパをよそに森に向かって走り去ってしまったそうだ。

翌日、泣き晴らしたアシリパがコタンに帰ってきた・・・。


マカナックル「大人びてはいるがアシリパは寂しがり屋のいたいけな子供なのだ」

・・・アンケシさんから数時間前に聞いた話と何か引っ掛かる。

A『アンケシさんは――』

マカナックル「アンケシもその日。何があったかは知らないが目を腫らして帰ってきたな」

・・・いや、絶対そうだ。

マカナックル「――アンケシは年相応の振る舞いが出来ない。不器用で可哀想な子供だよ」

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作者名:白文鳥 | 作成日時:2020年9月27日 22時

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