33話 遠吠え（1） ページ5
チセの中で、アシﾘパと杉元は何かを話していた。
俺とオソマとマカナックルさんはシロを構っていた。
オソマ「シロは本当に松崎ニｼパが好きね」
A『長い付き合いだからな』
マカナックル「へぇ・・・どのくらい？」
多分・・・一年は経った？かな？
A『コイツとは・・・日露戦争が終わってから・・・暫く一緒にいる』
マカナックル「長いな・・・」
マカナックルさんがシロに手を伸ばす。
シロはマカナックルさんからフイッと顔を逸した。
マカナックル「シロ・・・か」
マカナックルさんがニカッと笑った。
マカナックル「同じ名前のカムイを知ってるぞ」
A『カムイ・・・ねぇ』
オソマが俺の膝の上にドカッと座る。
オソマ「松崎ニｼパとシロは家族？」
A『ああ』
程なくしてマカナックルさんとオソマは奥さんに呼ばれてチセから出ていった。
すれ違うかのようにアンケシさんがこちらに来た。
アンケシ「いいなぁ・・・ずっと一緒だなんてさ」
A『・・・そう？』
シロの赤い目玉は、赫映の最期を写していた。
たった一ヶ月しかなかった三人暮らしは、暖かくて眩しかった。
もう戻ることは無いが・・・。
アンケシ「誰にも言っていないけど。Aには教えてやる」
そう偉そうに言ってアンケシさんは俺の隣に腰を下ろした。
アンケシ「私には・・・父と拾ったメスの狼がいたんだ」
狼？
A『あの白い狼じゃなくて？』
アンケシ「あの子はアシﾘパが拾った子だ」
ふーん・・・・。
アンケシ「毛皮が黒っぽかったから
A『安直』
アンケシ「Aには言われたくないぞ」
アンケシさんが話を戻した。
アンケシ「流石にカムイを飼うわけには行かなかったからコタンで一緒には暮らさなかった」
「だけどたまに会いに行っては一緒に狩りをしたり毛づくろいをしてやったりとかしていた」
アンケシさんが目を細め呟く。
アンケシ「一人っ子の私に・・・アシﾘパとはまた違う姉妹が出来た。そんな気持ちになっていた」
A『・・・そうなんだ』
アンケシさんが頷いた。
そして。
アンケシ「父が亡くなった後も。私はその狼に会いに行ったんだ。どうしようもない寂しさや不安に襲われたとき、クンネと一緒にいれば・・・平気だったから」
「ある日のこと―――」
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作者名：白文鳥 | 作成日時：2020年9月27日 22時
