42話 鹿を探すぞ！（2） ページ32
杉元「急所をはずした」
A『当てたが仕留めきれなかった』
アシﾘパ.アンケシ「「追うぞ登れッ」」
俺たちは自然と二手に別れて山道を登る。
アンケシ「・・・こっちだ！」
アンケシさんがピタッと立ち止まり耳を澄ませた。
アンケシ「・・・・駄目だ。今日は調子が悪い」
A『足跡・・・藪を通られたな。
血痕があるから直ぐに見つけられそうだ』
アンケシ「絶対に見つけるぞ。このまま鹿を逃したら無駄に苦しい思いをさせてしまう」
アンケシさんの表情が曇る。
A『・・・俺も咄嗟のことに一瞬焦っちまった。申し訳ない』
軍にいる頃なら有り得ない失敗だ。
アンケシ「兄弟諸共捕まえて食べてやることで許してもらおう」
兄弟・・・兄・・・。
A『百之助・・・』
アンケシ「なにか言ったか？」
A『いや。別に』
アンケシさんがポツリと呟いた。
アンケシ「必ず仕留めてあげなくては・・・な」
「【兄様の狙撃の腕は凄いですね！！
尊敬しておりますッ】」
A『・・・・・早く見つけ出そう』
ーー
少し歩くとシロが俺のもとに帰ってきた。
アンケシ「あ！久しぶりだなシロ」
A『何処行ってた？』
シロは小さく「ガァ」と鳴いて俺の肩にのった。
アンケシ「最近見かけないと思ったら。
なんだ・・・私達を追っていたのか？」
A『シロがそう言ったのか？』
アンケシ「ううん。でもここに戻ってきてるんだからそういうことだろう？」
そういうことなのか？
アンケシ「シロはAの側が良いんだな。
きっと、Aが一人じゃ心配だから放っておけないんだろう」
A『え〜・・・』
アンケシさんが背伸びしてシロの羽を撫でる。
アンケシ「おかえりシロ」
「ほら。Aも言うんだ」
A『え』
アンケシ「おかえりって言わないと帰ってきた感じがしないだろ？」
「【「おかえり」って言葉と「ただいま」って言葉は大事だと思うな】」
「【だってどちらもさ―――】」
アンケシ「相手の帰りを待ってるからこそ。
言えるんだもんな」
A『・・・・だな』
『おかえり。シロ』
シロの真っ赤な瞳に俺の青黒い瞳が映る。
アンケシ「さ！鹿を探すぞ」
A『はいアンケシさん』
「【あと行ってきますって言葉も大事なんだよ。A君】」
「【必ず戻るって言う約束にもなるんだから】」
アンケシ「早く行くぞ？A」
A『はい。アンケシさん』
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作者名：白文鳥 | 作成日時：2020年9月27日 22時
