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42話 鹿を探すぞ!(1) ページ31

暫く歩くと。

アシリパ「ついさっきまで鹿が雪を掘って笹を食べた跡がある」

アンケシ「見ろA。オス鹿が角研ぎをして縄張りを主張したんだ」

アシリパがストゥを取り出した。

アシリパ「この木を棒でこすって音を出したらオス鹿が戻って見に来るかもしれない」

杉元「ストゥ乱用しすぎじゃない?」

そこら辺に落ちていた木の棒を杉元に手渡す。

杉元「え?俺?」

A『猟で金を稼げなかったのって誰のせいだった?』

杉元「・・・・・」

杉元が木の棒をこすりつける。

アシリパ「私たちの生活で鹿は無くてはならない存在だ。いろんなものに利用する」

アンケシ「この靴も鹿の皮だしマカニッ(矢骨)にも鹿のすねの骨が使われているんです」

アシリパが俺たちに説明する。

アシリパ「フチが言うには昔は今よりもっとたくさん鹿がいて鍋に火をかけてから狩りに行くほど簡単に獲れたって」

アンケシ「キムンカムイやホロケウカムイみたいに名前にカムイをいれず【獲物】という意味で鹿をユクと呼んだのも簡単に獲れたからではないかと思いますね」

アシリパ「ユクは【鹿を司る神様】が地上にばら蒔くものだと考えた。人間に食べ物として与えてくれたものだと・・・」

アンケシ「でもある年の冬・・・鹿が食べ物を堀りおこせなくなるくらいの大雪が降った」

  「鹿が大量に死んでいなくなった。
鹿を食べる狼も死んでいなくなったんだ」

アンケシさんが悲しそうに眉を下げた。

アシリパ「簡単に捕まるからきっと誰かが鹿を粗末に扱った。だから神様が怒って鹿を地上に降ろさなくなったんだってフチがよく話してくれた」

杉元は静かにアシリパの話を聞いていた。

アンケシ「・・・・・!」

アンケシさんが後ろを振り返り指を指した。

その目線の先には大きな鹿が二頭こちらを見つめていた。

兄弟か・・・・。

杉元「うおッほんとに来た!!馬みたいにでけえッ」

アシリパ「静かにゆっくり動け」

杉元と俺は銃を構える。

アンケシ「Aは左側の〃兄〃を撃て」

A『・・・了解』

杉元と俺でボルトを下げるが。

アンケシ「あ」

鹿がこちらを警戒している。

アンケシ「普段聴き慣れない金属音に警戒している」

そして鹿は後ろを振り返りそれぞれ別の方向に走り出した。

A『杉元ッ引け!!』

杉元「!」

ダァァァァァンと銃声が響く。

杉元が狙った鹿の尻と、俺が狙った鹿の首。

それぞれを銃弾が貫いた。

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作者名:白文鳥 | 作成日時:2020年9月27日 22時

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